Sufjan Stevens / Javelin

M1こそパーカッシヴで重量感のあるブレイク・ビーツ的で賑やかなビートが前作「The Ascension」との連続性を感じさせるが、以降の楽曲はアコースティックな音色を基調としている。
Sufjan Stevens名義のフォーク・サイドの作品としては2015年の「Carrie & Lowell」以来という事で、評論家筋の評価の高さは世間的な期待値の高さを反映してもいるのだろう。

ピアノにバンジョーにストリングスといった基調を成す音色は相変わらずで、特徴と言えばポリフォニークワイアめいたコーラスが全編に渡って存在感を放っている事くらいだろうか。
触れると壊れてしまいそう、という紋切型の表現が良く似合う繊細なメロディの魅力は否定し難いが、フックに富んでいるかと言うとそうでもなく、BGMとして簡単に耳を通過していってしまう。

個人的にこの路線への欲求は2021年のAngelo De Augustineとの共作が思いの外良作であった事で満たされてしまった感がある。
M4のメロディは「ネバーエンディング・ストーリーのテーマ」を彷彿とさせ、正にメジャーな映画をインスパイア源として制作された同作の続きを聴いているようで、正直新鮮味には乏しい。

とは言え良く良く細部に耳を傾けてみると、ビートを構成する音の中に微細な電子音が決してこれ見よがしな感じはなく自然と溶け込んでおり、真の意味でフォークトロニカ的と言える。
分離していたSufjan Stevensのフォーク・サイドとエレクトロニック・サイドとが初めて高次に融合した作品だとは言えるのかも知れない。