Troye Sivan / Something To Give Each Other

M1は少しBasement Jaxxを彷彿とさせる享楽的で猥雑なラテン・ハウス風だが、この手の能天気なダンス・ポップにすっかり耐性が付いてしまったのか、意外な事に拒否反応は全く起こらない。
今ならCarly Rae Jepsenなんかもすんなりと聴けてしまうかも知れない。

意外にもM2以降は下品な感じが全く無く、M4の優雅なストリングスを配したディスコ風なんかは寧ろソフィスティ・ポップ的と言っても良いくらいだし、オルガンを基調としたM5に至ってはノンビートで、どちらが良い悪いといった話ではないが、只管アッパーだったKylie Minogue「Tension」とは違ってそれなりの緩急もある。

何れにせよウェルメイドなポップには違いなく、1曲をA. G. Cookが手掛けている以外はハイパー・ポップ的なエクストリームな意匠は皆無で、そのM10にしたってウォブル・ベース以外は特にサックスの音色が宛らAORみたいな楽曲で、あの下らないADMに続いてまさか今度はエレクトリックAORを標榜しているのだろうか?

M6のガラージ風等、佳曲は少なくないが、それにしてもプロダクションは全く面白くない。
その点では2023年に猛威を奮ったダンス・ポップの多く、それこそKylie MinogueだってRomyだって同じな訳で、Troye Sivanだけを貶すは些かフェアではないが、それにしても正直ちょっと飽きてきた感は否めない。