Skrillex / Quest For Fire

以前からFKA TwigsやBeyoncéの作品でその名前を見掛ける度に引っ掛かっていたが、JokerやFred Again..はともかくして、Missy ElliottMr. OizoFour TetからEli Keszlerまでもが参加しているとなっては、愈々無視も出来なくなった。
近影を見ると、EDM全盛期の如何にも脳味噌が小さそうな見た目からは多少落ち着いた感があり、サウンドの方も適度に成熟しているのだろうと想像していたが、これが正に当たらずも遠からずと言った感じ。

先ず意外だったのはウォブル・ベースや執拗なヴォーカル・チョップ、煽情的なブレイクといった、シグネチャとも言える要素が一切捨象されていない点。
EDMが過去の産物になった現在でも、自分のスタイルにある程度一貫した拘りを感じさせ、トレンドに合わせて右往左往するよりは余程好感は持てる。
JokerとFred Again..との共作であるM3・M4等は比較的イメージに近いダブステップで、アッパーなのは間違い無いが、EDMと呼べる程の大箱感は意図的に忌避されているようにも感じられる。

Missy Elliottのラップが強烈なフックになっているM2のエレクトロは、懐かしいSpank Rockボルティモア・クラブ、マイアミ・ベースといった単語を連想させ、Diploと意気投合するのも良く解る。
かと思えばスピーディなM9はHudson Mohawke「Cry Sugar」に通じるようなハイパーさで、思わずハッピー・ハードコア等という言葉まで想起させ、兎にも角にも節操は無い。

Four TetとのM6は若干フューチャー・ガラージ的というか、EDMが登場する直前の、SkreamやRuskoによって推進されたダブステップのポップ化がブロステップという言葉で括られた頃のサウンドを彷彿とさせる。
昨年で言えばやっぱりFred Again..が手掛けたRomy辺りに通じる感覚があり、意外に現在のモードにフィットしなくもない。
しかしそれにしても、只管ポップに突き進んだ2010年代と現在のダンス・ポップの隆盛を思えば、M.I.A.「XXXO」には先見の明があったのだとしか思えない。