Sbtrkt / The Rat Road

昨年のSantigoldのアルバムで久々にその名を目にしたSbtrktの待望の復活作。 
ポスト・ダブステップの中でも一際ポップで享楽的でありつつ、Ruskoなんかのブロステップとは違って品のあるダンス・トラックを得意としていただけに、嘗てのコラボレーターであるJessie Wareの近作に続きパンデミック明けのフロア熱を追い風に、満を持してダンス・オリエンテッドな作品を繰り出すものかと思いきや、これが絶妙な塩梅でどっち付かず。 

M11のドラムンベースこそ4 Hero等の名前を連想させないでもないが、全般的に嘗てのブロークン・ビーツ寄りのダブステップやフューチャー・ガラージのイメージからは乖離がある。
勿体付けた長いイントロといった感じのM1〜M3を抜けて、Toro Y Moiが歌う実質的なオープニング・トラックのM4は少しフレンチ・エレクトロと言うかDaft Punkのようだ。

M16はあからさまなジューク/フットワークの盗用、M18はオルタナティヴR&B的で、流石は元はウェスト・ロンドンのブロークン・ビーツ・シーンから出立し、ダブステップに便乗して名を上げた人だけに相変わらず節操が無い。
オープニングはファンタジー映画の導入部みたいに大仰で、矢鱈とインタールードも多くコンセプチュアルな大作然としており、Jessie Ware「That! Feel Good!」の潔いポップネスと較べるとどうにも洒落臭いと言うか。

とは言えやはりM5後半のジャジー・ブレイクス的な展開等に垣間見える洒脱なポップ・センスには相変わらず否定し難い魅力があるのも確かで、決して嫌いになれる作品ではない。
変に気負わなければFour TetCaribou、或いBonoboのような、驚くような革新性は無くとも安定して良作を生み出し続ける重鎮達に近い存在になり得るポテンシャルは確かにあると思う。