Sleater-Kinney / Little Rope

先ずは低音域のヘヴィネスが特徴的で、恐らく再結成以降で最も騒々しいサウンドが展開されている。
一方でSt. Vincentを招聘して行われた「The Center Won't Hold」に於ける実験の成果も損なわれてはおらず、エレクトロニクスやキーボード類の音色とフィードバックが生み出す残響が重なる事でサウンドに厚みを加えている。

メロディにはいつも以上に切迫感があると同時に、M3等は何時になく哀愁を感じさせるし、M7は獰猛さとセンチメントとを往き来するかのよう。 
これにはCarrie Brownsteinの両親の交通事故死という痛ましい出来事が大きな影響を及ぼしているものと思われるが、それでも決して染みったれただけの御涙頂戴の作品にならないのがSleater-Kinneyの素晴らしいところだ。

メンバーと家族の違いはあれど、身近な人の死にインスパイアされているという意味ではFoo Fighters「But Here We Are」に通じると言えるかも知れない。
特にエモーショナルで強く哀別の感覚を惹起するM9は、同作の壮絶なラスト・ナンバーを思い起こさせる。
そこに共通する感覚を一言で表すならばレクイエムという言葉がしっくり来る。

陳腐なのは百も承知だが、それでもやはりこういう作品を聴くと、作り手の熱量や想いが音に映り込み、それが聴く者の胸を打つという事は間違い無くあるのだと思う。
勿論そこには本作なら死別、John LennonBob Marleyなら平和への願いでKurt Cobainの場合は自己嫌悪といった物語によるバイアスが掛かるものだという客観性は失ってはいけないとも思うのだが。