Future Islands / People Who Aren't There Anymore

単にツイン・ギターの代わりにシンセを使ったエモ、と言えばそれまでといった感じのサウンドではあるが、ゴスのようともニュー・ロマンティクスのようとも言えそうなヴォーカルに違和感があり過ぎて、ひょっとしてある種のジョークなのだろうかと訝しんでしまう。
アーティスト写真に写る地味な中年男性4人の佇まいは宛らGuided By Voicesのようだが、見方を変えてNew Orderだと思えば腑に落ちるような気もしなくはない。

センチメンタルなメロディも手伝って感触としてはThe Postal Serviceなんかに近いが、ベースとドラムが徹底して生音なのが却って奇妙な感じで、シンセ・ポップではなくニュー・ウェイヴという言葉を使いたくなる感覚も解る。
M3やM11等のスロウなバラードに至っては最早10ccみたいな80’sAORのようでもある。

Ian CurtisかPeter Murphyのような、或いは時折ちょっとIggy Popを彷彿とさせる声で、MorrisseyDavid Sylvianみたいにシアトリカルに、且つ力一杯歌われるM5のA-Haのような80’s風のシンセ・ウェイヴは特に冗談じみている。
これが例えばWeezerCloud Nothingsみたいな如何にもエモといった感じの青臭い声だったとしたらさぞかし詰まらなかった事だろう。

ヴォーカルのSamuel T. Herringにはラッパーとしてのキャリアもあり、最近では何とBilly WoodsとKenny Segalの「Maps」にも客演があったするから益々訳が解らない。
Madlibとのプロジェクトの経験もあり、ラッパーとしてはオルタナティヴ志向が強いのは間違い無いと考えると、益々このバンドを正気でやっているとは思えない。