Kamasi Washington / Fearless Movement

「The Epic」「Heaven And Earth」でタイトルが示す通りの荘厳でスピリチュアルな世界観が表象されていたのと比較すると、本作の作風は少しカジュアルになったように感じられる。
サウンド面では前作まで頻出していたストリングスが一切登場しない点が判り易いが、アート・ワークもこれまでは宇宙空間や天空の鏡に立っていたKamasi Washingtonが俗世に降りてきたという感じで、明らかにスタジオだと解る場所に立っている。
そこに映り込む初めての他者がKamasi Washingtonの実の娘だというのも示唆的で、その存在は彼をその場所に先導してきた天使のメタファーでもあるだろう。

そういう意味ではこれまでで最も俗っぽい(と言うとまるで貶しているようだが、ネガティヴな意味では全くなく、寧ろ好意的に捉えている)ジャズの代表とも言えるフュージョンに接近しているように感じられるのも興味深い。
珍しくロック風の疾走感が溢れるD2-M14はその最たるものだし、D2-M2ではアグレッシヴなギターがMahavishnu Orchestraを連想させたりもする。

ジャズのサブジャンルという狭義においてもそうだが、ジャンル混交的という意味でもまたフュージョン的な作品であり、D1-M2やM4ではストレート・アヘッドなラップを擁し、D1-M5のP-Funk直系のファンクではGeorge Clintonを、D1-M7ではBJ The Chicago Kidを迎える等、嘗てなくオープンな作風になっている。

と言っても音色的な新奇さがある訳ではないし、「Heaven And Earth」のように練り込まれたある意味で戦略的なエクレクティシズムも希薄で、畑違い(と言ってもヒップホップとR&Bなので隣の畑くらいだが)のミュージシャン達を招いて、後は成り行きに任せたといった感じのあくまで自然発生的な軽さと風通しの良さを感じさせる。