Badbadnotgood / Talk Memory

f:id:mr870k:20220113235349j:plain

Arthur Verocaiのアレンジによるストリングスを大々的に採り入れたM3やM5がアルバムの重要なフックになっており、単なる話題作りの為のコラボレーション以上の充実した成果を挙げている。
ストリングスの多用という点では少しFloating Points「Elaenia」を彷彿とさせる部分があるかも知れない。

特にTerrace Martinのサックスをフィーチャーした勇壮なM9はKamasi Washingtonに通じるし、ユーフォリックなM5はBuild An Arkを思い起こさせる。
つまりはLAジャズと共通する部分が多くありながらも、スピリチュアルというよりは実にロマンティックな音楽で、感覚的に一番近い気がするのはBonobo「Migration」(の前半)だったりする。

エレクトリック・ベースとドラムのコンボが基盤となっているバンドだけあって、同時にフュージョン色も強く、歪みまくったエレクトリック・ベースが唸りを上げるM1や、M4のエレクトリック・ギターからはMahavishnu Orchestraの影響が良く解る。
個人的にはグルーヴィなベースがドライヴするM10が特にお気に入りだが、この曲が日本盤のボーナス・トラックだというのは贅沢と言うか勿体無いと言うか。

けれども如何にもジャズ的な、各人のプレイヤビリティを顕示するようなところは希薄で、楽曲のトータリティを重視した印象を受ける。
ポップネスの面では文句無しに功を奏しているが、逆に言えば曲の良さ以外の聴きどころは少ない。
と言うよりソング・ストラクチャが強靭過ぎて、細部が耳に入ってこないと言うべきか。