Jlin / Akoma

Jlinにはジューク/フットワークにおけるレフトフィールドの極点というイメージがあり、ある意味でDJ Rashadとは対極の存在という認識を持っていた。
或いはそのイノヴェーションとポップネスのバランスを以ってジューク/フットワークのマーケットを拡張したDJ RashadがAphex Twinだとしたら、Jlinはその急進性においてAutechreと並置されるべきと言うか。

しかしながらこの新作ではDJ Rashadに接近している、とまでは言わないが、少なくとも「Dark Energy」や「Black Origami」と較べると段違いにポップ。
そのポップネスがメロディ要素の発展(特にピアノ主体の後半3曲に顕著)も然ることながら、主にリズムによって齎されている点に本作のユニークさはある。

殆ど一小節か二小節毎に目まぐるしく変遷するリズム・パターンは、恰も驚異的なスピードでトラックを入れ替えるミックスを聴いているようで、そのヴァリエーションも幅広く、ゲットー・ハウスは勿論、ドリルやダブステップのハーフ・ステップから、場合によっては殆どガバやハード・ミニマルのように聴こえる瞬間もあり飽きさせない。

意外なゲストも本作のトピックだが、Björkはともかくとしても、Kronos QuartetやPhilip Glassが発する音を素材として扱いながら全くとしてモダン・クラシカルといった文脈に回収されることがなく、あくまでリズム要素として吸収している点は賞賛に値する。
因みにBjörk参加のM1については、フルートを変調したような上音が「Hidden Place」を連想させるという以外には、チョップされるヴォーカルの主がBjörkだという訳でもなさそうで、何をしているのか良く判らない。