2562 / Unbalance

勢いのあるシーンの大抵がそうであるように、ダブステップにおいてもまた毎年のように「シーンの顔」とも言うべき存在が入れ代り立ち代りに現れる。
2006年はBurialを置いて他に居ないが、2007年はBenga或いはPinch、そして2008年は2562の年だった印象がある。
(因みに2009年はShackletonか。)

2008年の1stは、テクノとダブステップの接合におけるエポックメイキングとして大いに話題となり2562の名を轟かせたが、実はレーベルの意向でそれまでに制作したトラックのストックから寄せ集めてリリースされたアルバムらしく、本人はその仕上がりに全く満足していないそうだ。

そうして完成した本当のデビュー作とも呼べる2ndからは、細部に渡り綿密に作り込まれた印象を受ける。
インタールード的なトラックは一つとして無く、全トラックそれぞれに際立った完成度がある。
PinchをしてTectonicの最高傑作と言わしめたのも頷ける。

2562はテクノとダブステップの媒介者として語られる。
確かにエコーやリバーブは控え目で、何よりダブステップに希薄な上モノの雄弁さは特にデトロイトテクノに通じる感覚がある。

ではこのサウンドはテクノに呑み込まれたダブステップなのかというとそんな事はなく、多様化の一途を辿る現在のこのジャンルではむしろ正統派のダブステップに聴こえる。
キックとベースの重さは確かにダブステップで、特にバウンシーなビートは、ダブステップにとって最初のアンセムであるBurialの「South London Boroughs」を継承するかのようだ。

ダブステップの「変化」よりも、「進化」或いは「深化」を知る上での最良の一枚だと思う。