Lou Barlow / Goodnight Unknown

冒頭まるでSebadohのような若々しく疾走感溢れるサウンドに驚く。
勇壮な雰囲気のミドルテンポのナンバーはFolk Implosionを思わせ、アコースティック・ギターよる弾き語り曲は(音質は遥かに良いけれど)Sentridohのようだ。

確かにこのアルバムはLou BarlowDinosaur Jr.脱退後のキャリアを集約したかのような作りである。
Dinosaur Jr.再結成以降、どうやらSebadohまでも再結成したようだし、今となってはLou Barlowのその長く多様なキャリアの中でも(セールスにおいても評価においても)突出した存在であるDinosaur Jr.を相対化する意図があるのかも知れない。

という邪推をしてしまうのも、ワンアイデアを突き通す
ある意味で単純なJ Mascisと比べると、どうもLou Barlowには捻くれたようなイメージがあって(Folk Implosionなんていうバンド名とか)、新しい試みを始める度に何かが裏に隠されているのではないかと勘繰ってしまう。

だがこのアルバムに深く耳を傾けていると、そのSebadohっぽさもFolk ImplosionっぽさもSentridohっぽさも、ごく僅かなアレンジメントの差異でしかない事に気付く。
その創作の基幹にあるのはソング・ライティングという行為であり、また「歌を歌う」という事そのものではないか。

Steven Blushの「American Hardcore」に、Deep Woundを辞めたLou Barlowが旅の車中でNeil Youngの良さに気付いたというエピソードがある。

常々90'sアメリカン・オルタナティブの源泉の一つには
ポスト・ハードコア世代によるNeil Young(とは歌心のようなもののメタファーであって別にDavid Bowieでも良い)の再発見があると考えていたが、意外な事に、Lou Barlowはその当時のモチベーションのまま現在も音楽と向き合っているのかも知れない。