Peverelist / Jarvik Mindstate

タブステップを聴かない友人に2562の近作を聴かせてみたところ、「安っぽい」というような感想が返ってきた。
このジャンルの中では飛び抜けて完成度の高い作品だという印象を持っていただけに些か不満ではあったのだが、よくよく考えてみるとポストエレクトロニカ時代のエレクトロニック・ミュージックとして、チープネスこそダブステップの大きな魅力であった事に思い至った。
どうやら先述の2562やShackletonの近作を通過する事でその事を忘れてしまっていたらしい。

Peverelistの名を知ったのがSkull Discoのコンピレーションだったせいもあって、この1stフルレングスにはダークでヘヴィなサウンドを予想していたが、意外なほどあっさりしていて、全体的な「軽さ」が印象に残った。
(Pinchとの共作は例外だが。)

そのサウンドの大きな特徴であるポリリズミックなハイハットは、確かにShackletonの呪術性と通じる部分もあるが、あの強烈な作家性には遠く及ばない。
デトロイトテクノからの影響を感じさせる上モノは2562と共通する点でもあるが、やはりそこまでの精巧さや集中力は感じない。

しかしながら上モノの饒舌さたるや逆に2562の比ではない。
これほどメロディアスなダブステップは珍しく、曲によっては「レイヴィー」などという恥ずかしい言葉すら思い浮かぶ始末。

Peverlistのサウンドが何処か懐かしい感覚を齎すのは、チープなシンセ音の響きと共に、その佇まいが実に匿名的であるせいかも知れない。

このアルバムを聴いていると、仄暗く煙たいダンスフロアの光景が思い浮かぶ。
そこでは個性の無い、どれも似たようなトラックが延々と掛かり続けている。
それは自分にとって「テクノの時代」の記憶であり、今となって不思議と愛おしく感じられる。

その点では、テッキーと評されるダブステップのどの作品よりも、LFOを観た際に感じたテクノへの希求を埋めてくれる作品かも知れない。