Hotflush Recordings / Back And 4th

テクノ/ハウス寄りのポスト・ダブステップを牽引する3つのレーベル、ScubaのHotflush、Ramadanman=Pearson Soundが運営に関わるHessle Audio、そしてUntoldのHemlockには、主催者自身がシーンの先駆的なプロデューサーである事の他に、その全員が2009年にPoleの~Scapeからリリースされたコンピレーション「Round Black Ghosts 2」に参加していたという共通点がある。
前述の3人の他にPeverelist & AppleblimやMartynのトラックも収められたそのコンピは、今聴くと現在のポスト・ダブステップと呼ばれるシーンを予見していたようでもある。

オーナーのScubaやUntoldに加えてBoxcutterにFalty DL、RoskaやMount KimbieにJoy Orbison、リミキサーとしてJames Blakeと2562が参加した本作は、ここにRamadanman=Pearson Soundを加えれば宛らポスト・ダブステップ・オールスターズの様相を呈しており、「Round Black Ghosts 2」におけるダブステップとテクノ/ハウスの接合のその後の展開を示唆するような内容になっている。
その展開の先頭に居るのは間違い無くMount Kimbieで、まるでHudson Mohawkeが2ステップ・ガラージに取り組んだようなDisk2のM1のエキセントリックさに目が眩む。

けれども本作を強く印象付けるのは先に挙げたポスト・ダブステップを代表する面々によるトラックよりも、むしろBoddikaやSigha、George Fitzgeraldといった耳馴染みの薄いニューカマーの作る音楽の方で、そこにはベルリンに移住し、今やBerghainのレジデントを務めるScubaの現在の志向性が色濃く反映されている。
Scuba自身によるDisk1のM5の臆面も無いアシッディなサウンドが表象するように、それらはダブステップの跡形も無い純然たるテクノ(或いはGeorge Fitzgeraldの場合はハウス)であり、本作においてはそれらの新録トラックの方が前半に収められている事で、時代の前後感覚が麻痺するようだ。

それらのサウンドは早くもポスト・ポスト・ダブステップの可能性の少なくとも一面を暗示するようだが、しかしそれは何度目かのテクノ・リヴァイヴァルと言うよりも、未来と過去と現在とが均質化した状況がかつて「未来の音楽」だった筈のエレクトロニック・ミュージックを愈々本格的に覆うような想像をさせる。
Autechreの音に驚いた日々が何と懐かしい事か。