これ程多面的なイメージを膨らませられるステージングを
果たして自分は観た事があっただろうか。
神々しくフレンドリーで、フリーキーでいて思慮深く
クールで獰猛で土着的で都会的で攻撃的でピースフルでレイジーでタイトで…
ステージ上のErykah Baduに目を釘付けにされながら
そんなアンビバレントな形容詞が取留めもなく溢れ出た。
それにしても何と特異な声なのだろう。
滑らかで伸びやかで、心地良く低音が効いていて
少し鼻に掛ったその声が、情感と共にトーンを高める度に
或いはプリミティブに雄叫びを上げる度に
または吐息を漏らすだけで全身に鳥肌が立った。
驚異的なブレの無さ、完璧な抑揚、天才的なリズム感。
リズム感、それは何も歌に限った事ではなかった。
決して派手な動きは無く、基本ダラっとしたレイジーな身のこなしの中で
時折見せる決めポーズのスタイリッシュな事ときたら!
トラックに合わせ絶妙なタイミングで腕を掲げる時
Erykah Baduの身体は恰も打楽器のように最高のブレイクを奏でるのだった。
当然人によって好き嫌いはあるだろうが、自分にとってのErykah Baduは
Michael Stipe並みにベストなシンガーであり
且つ山塚アイ並みにベストなパフォーマーではないか
なんていう大袈裟な事すら考えさられる程、実に素晴らしいステージングだった。