Erykah Badu Special Live In Japan '10



これ程多面的なイメージを膨らませられるステージングを
果たして自分は観た事があっただろうか。
神々しくフレンドリーで、フリーキーでいて思慮深く
クールで獰猛で土着的で都会的で攻撃的でピースフルでレイジーでタイトで…
ステージ上のErykah Baduに目を釘付けにされながら
そんなアンビバレントな形容詞が取留めもなく溢れ出た。


それにしても何と特異な声なのだろう。
滑らかで伸びやかで、心地良く低音が効いていて
少し鼻に掛ったその声が、情感と共にトーンを高める度に
或いはプリミティブに雄叫びを上げる度に
または吐息を漏らすだけで全身に鳥肌が立った。
驚異的なブレの無さ、完璧な抑揚、天才的なリズム感。


リズム感、それは何も歌に限った事ではなかった。
決して派手な動きは無く、基本ダラっとしたレイジーな身のこなしの中で
時折見せる決めポーズのスタイリッシュな事ときたら!
トラックに合わせ絶妙なタイミングで腕を掲げる時
Erykah Baduの身体は恰も打楽器のように最高のブレイクを奏でるのだった。


当然人によって好き嫌いはあるだろうが、自分にとってのErykah Badu
Michael Stipe並みにベストなシンガーであり
且つ山塚アイ並みにベストなパフォーマーではないか
なんていう大袈裟な事すら考えさられる程、実に素晴らしいステージングだった。