Georgia Anne Muldrow / Seeds

ダメージ加工が施されたジャケットのイメージそのままに、本作には埃が降ってきそうなソウル・ミュージックから取られたレコード・ノイズ塗れのサンプリング・ループが横溢しているが、単なる古臭さ以上のフリークネスも強烈に漂っている。

これぞMadlibといった感のある乱雑な手付きのミックスや変則的なビートも勿論重要だが、Georgia Anne Muldrow自身のヴォーカルも無視出来ない存在感を放っている。
それは循環するメロディをなぞるだけのものとは全く違い、歌と呼ぶのが憚られるほど自由奔放で流動的で、フリースタイルという言葉がしっくり来るという意味でヒップホップ以降にしか有り得ないソウル・ミュージックとして、単なる懐古趣味とは一線を画している。

Madlibの関与を含め本作にはErykah Baduの「New Amerykah」シリーズの特に1作目と共振する感覚があるが、ソウル・ミュージックの更新という面において、Erykah Baduの孤軍奮闘に待ったを掛けるようでもあり実に頼もしい。

後はもう何度目かすら判らないD'Angelo帰還の噂をそれでも信じて待つしかない。