スチャダラ2010 〜オールスター感謝祭〜

ついこの間De La Soulデビュー20周年のアニバーサリーライブがあったかと思えば、今度は「スチャダラ大作戦」から20年である。
(尤もDe La Soulは世界中をツアーして廻っていたので
実際には21年目だった訳だが。)
同時代のUSオルタナティブ(つまりグランジ)に反応した日本のロックバンドが殆ど皆無だった事を考えても、SDPのニュースクールに対する反応が如何に早かったかが解るというものだ。

この日の豪華過ぎるゲストの中でも一番の話題を掻っ攫っていったのがラストの小沢健二であるのは間違い無い。
「ブギーバック」は自分にとって音楽にのめり込む切っ掛けとなった曲の一つでもあり、まさかのオザケン登場には勿論興奮したし感慨深いものがあったが
周囲の狂乱を余所に何処か醒めた感覚もあった。
余りの事態に思考回路が停止していただけかも知れないが。

それよりも嬉しかったのは同じく「スチャダラ外伝」に収録された「Get Up And Dance」がLB Nation勢揃いで聴けた事だ。
キミドリだけはソロで登場しなかったので演らないまま終わってしまうかと思ったけれど。

Tokyo No.1 Soul Setかせきさいだぁは予想の範囲内だとしても、まさかThe Cartoonsや四街道ネイチャー、脱線3までが復活するとは夢にも思わなかった。
あれ程憧れた大LB祭りが16年振りに目の前で繰り広げられる様を眺めながら、頭の中では「偉大なるアマチュアリズム」「永遠のモラトリアム」などという言葉が過った。
(それはDe La Soulに感じたプロフェッショナリズムとは対照的ですらあった。)
後輩であるアルファやRip Slymeと比べるとラップは下手だしリリックもまぁ下らない。
なんせ「秘密の暗号 やしきたかじん」である。
最高である。

日本のヒップホップにとって、高木完いとうせいこうといったオールドスクーラー達が片足を業界に突っ込んだような人々だったのに対して、その発展期がそのようなアマチュアリズムの発露としてあった事は非常に幸福な事だったのではないかと思う。
彼らのような「持たざる者」が東京という街の圧倒的な情報量とセンス(と自己顕示欲)だけを武器に悪ふざけに勤しむ様は、自分のようなもっと持たざる田舎の中学生にとって良い具合に身近な憧憬の的となった、
その点では大LB祭りの1週間後に開催されたさんぴんCamp勢だって大差は無かったと思う。
ただ単にメンタリティが違っただけで。
(良く考えると「偉大なるアマチュアリズム」ってRhymesterだし。)

20年を経てLB勢は見事にプロとアマチュアに分かれてしまったが、SDPやTokyo No.1 Soul Setが比較的成功し得たのはシンコのサンプリングセンスや川辺ヒロシのテクニックが他よりもほんの少しだけ秀でていたからに過ぎないという気がする。

ただこの日印象に残ったのは、そんなアマチュア集団を牽引して働く唯一のプロフェッショナル=Boseの姿だった。
単なる目立ちたがり屋か天性の責任感故か、いずれにしても16年前もこの日も、Bose無くして野音が埋まる事は無かっただろうと思う。
正に「生まれながら立ち位置は真ん中」である。