Liars / Sisterworld

00年代の前半にThe Strokesの登場と共に勃興したロックンロール・リバイバルは、自分にとってその後の数年に渡って新しいとされる音楽から遠退く契機となった。
The Strokesが特別駄目なバンドとも思わないが、然程スペシャルな存在だとは未だに思えない。
メディアハイプだったとまでは言わないが、それまでの数年間に虐げられ続けたロック絶対主義者達がここぞとばかりに騒ぎ立てる様は非常に疎ましいものがあった。

控え目に言っても充分に懐古趣味的なその文脈に、ニューヨークを中心に発生しつつあったポストパンク・リバイバルの流れまでが回収された事は自分にとっては少なからず不幸な事だったと思う。
The Strokesを頂点とするシーンの一部であるかのように伝わった結果、未だにYeah Yeah YeahsTV On The Radioすらまともに聴いていない。
その中でも長年気になり続けていたのがLiarsで、この新作を聴いて今まで手を出してこなかった事を実に後悔した。

投げ槍で倦怠感が染み付いたボーカルからはLou ReedThurston Mooreに至るNYアートパンクの系譜を、緩急の激しいファズの聴いたギターサウンドからはまたPixies以降の90'sオルタナティブとの連続性を感じさせ、復興主義よりもむしろアメリカにおけるパンクミュージックの発展の直線上にあるバンドだという印象を持った。

一方でコーラスワークや残響処理への拘泥によるサイケデリアはAnimal CollectiveやAtlas Soundといったバンドとの共振や同時代性を感じさせ古臭い印象は全く無い。
尤も前述の2バンドに顕著なユーフォリアは皆無で、全体を覆う不気味で退廃的なムードがまたもやオルタナっぽい。

90年代オルタナティブ、00年代ポストパンクと現在進行形のサイケデリックなインディロックを繋ぐミッシングリンクとも言うべき希有な存在だと思った。