Kimonos / Kimonos

正に昨今のポスト・ダブステップがそうであるように、ポピュラー・ミュージックにおける「ポスト〜」という言葉は、大抵の場合、特定の音楽スタイルや手法を指し示すものではなく、あるジャンルから派生/発展した潮流を総称して使用されるようだ。

ストパンクと言うと反射的にThe Pop GroupGang Of Four、或いはThe Slitsなどのダブやファンクを採り入れたバンドを思い出すが、パンクから派生したという意味では、ハードコア・パンクやニューウェイヴをポストパンクと呼んでも然程不自然ではないだろう。

一方でMinor ThreatからFugaziへのシフト・チェンジが準備したポスト・ハードコアの日本における集大成としてNumber Girlというバンドを捉えてみると、その活動の後期におけるGang Of Fourなどへの明白な憧憬は、ポスト・ポスト・ハードコア(つまりはポスト・ポスト・ポストパンク)の先祖返り傾向を象徴していたのかも知れない。
同様にアメリカにおけるポスト・ハードコアAt The Drive-Inによってある種の完成を見たという印象があるが、その後のThe Mars Volta変拍子への偏重はZazen Boysと符合するようで興味深い。

Leo今井という人の事は何一つ知らないが、Kimonosを向井秀徳の課外活動としてのみ捉えてみるならば、Number Girl後期から続くポストパンク志向からLed Zeppelinを差し引いたような音楽に聴こえる。
Leo今井の歌がDavid Byrneを連想させる冒頭から、ポストパンク/ニューウェイヴ的サウンドが展開され、更にZazen Boys「I Don't Wanna Be With You」系統のディープ・ハウスがそれに続く。

向井秀徳のサイド・プロジェクトとしては想像の範囲内で意外性には乏しいが、敢えて言えばポリリズミックなドラムとマリンバの響きがTortoiseを彷彿とさせるM8が新機軸(これがLeo今井という人の素養なのだろうか)で、アメリカにおけるポスト・ポスト・ハードコアの重要な動向の一つにシカゴ音響派があった事を思い出す。
ラストはThe Velvet Underground飛び級で先祖返り。