Hole / Nobody's Daughter

これはある種のタブーなのかも知れないが、「Live Through This」というアルバムからはどうしてもKurt Cobainの気配を感じずには居られない。
全ての曲がKurt Cobainの手によるものとまでは思わないが、かなり強力な影響下で曲作りが為されたであろう事は想像に難くない。
「Pretty On The Inside」を聴けば、Courtney Loveを含めた当時のHoleのメンバーのソング・ライティング能力は推し量れるし、自力のみで「Miss World」のような名曲が書けるのであれば、どうして「Celebrity Skin」にBilly Corganを招聘する必要があったのだろうか。

そんな具合にHoleの作品にはいつも誰かの影が付き纏う。
今作でその役割を果たしているのはMicko Larkinなるイギリス人で、Courtney Loveがその才能に惚れ込んでアメリカに呼び寄せたというが、Kurt CobainBilly Corganに比べるとどうしたって役不足は否めない。

どの曲もOasisの「Wonderwall」、またはThe Verveの「Bittersweet Symphony」のようとはCourtney Loveの弁(多分褒め言葉なのだろう)だが、まぁ湿っぽく大味なロックがのんべんだらりと続く。
殆どの曲はディストーションを少し効かせたフォーク・ロックで、そうでなければ水増しされたグランジと言ったところだ。

救いはCourtney Loveの声が予想以上に良く出ている事だ。
(何年か前のフジロックでのソロの声の出なさ具合と来たらまるで和田アキコ並みだった…。)
しかもその声からは老いや憂いが滲み出て、まるでブルース・シンガーのように嗄れ渇き切っている。
それがとても魅力的だ。
そんな訳でアルバムの最後に収録されたアコースティック・ギターと歌のみのブルージーなナンバーに最もグッと来た。
Courtney Loveが歌うブルース・アルバムがあれば是非とも聴いてみたい。このスペシャルな声と歌の他に今のCourtney Loveに望む事など何があるだろうか。