MGMT / Congratulations

90'sのアメリカン・オルタナティブにサイケデリアの要素はほぼ皆無だった。
だから尚更にFlaming Lipsが1999年に発表した「The Soft Bulletin」及び「Race For The Prize」というアンセムの異物感とインパクトは凄まじく、それは少し性質の悪いジョークかと思えた程だった。

Flaming LipsがDave Fridmannと共に蒔いたそのサイケデリアやユーフォリアの種は今や百花繚乱状態だ。
その象徴的な存在はAnimal Collectiveに間違い無いが、オーバーグラウンドで最も大きく咲いた花と言えば、このMGMTという事になるのだろう。
自分をMGMTにまで導いたのもまたWayne Coyneとのコネクションであった。

MGMTの音楽性はAnimal Collectiveのポップ版と表現されるが、ポリフォニックな構造とエコー、リバーブの多用による残響処理は確かにAnimal Collective以降のトレンドに則ったサウンドではある。

しかしAnimal Collectiveサウンドが醸し出す強烈な逃避感覚や厭世観と比較すると、まぁ人間臭いと言うか、未だ地に足が着いた印象は受ける。
何処かユーフォリアを演じているような、俯瞰して薄笑みを浮かべているような、アイロニカルなユーモアがこのアルバムにはある。
冒頭の未も蓋も無いサーフ・ポップや「Brian Eno」「Lady Gaga's Nightmare」等という曲タイトル等からは、やはりFlaming Lipsに通じるセンスを感じ、そしてそれは本気で動物化を希求するように見えるAnimal Collectiveとは対照的なものでもある。

Animal Collectiveサウンドでは、器楽がそれとして解り易いフレージングを奏でる瞬間は殆ど無く、人の手による「演奏」をイメージする事は難しい。
そして何よりPanda Bearの声の持つ圧倒的な非人間性
それらと比較するにはMGMT(そしてFlaming Lipsも)のサウンドは余りに長閑でオーソドックスで、旧態依然とすら感じられる。

試しにこのアルバムの直後にAnimal Collectiveの「Feels」を聴いたらやはり別格という感じがした。
彼らやWayne Coyneの俗っぽさも決して嫌いでは無いけれど。