To Rococo Rot / Speculation



かつてこのグループがMouse On Marsと共に
クラウトロックリバイバルとして括られた際には
今一つその意図が理解出来なかったが
この新作は正にドイツのポップ・ミュージックの
素晴らしい伝統に即した音楽だという印象を受けた。


以前のイメージに近いアブストラクトな電子音響もあるにはあるが
大半はドラム、ベース、ギターやアナログシンセにヴィブラフォン等の
生演奏によるフレーズの反復を軸としたミニマルなバンドサウンド
曲によっては「TNT」の頃のTortoiseを思い出した。


但しTortoiseの近作がそうだったように
各音のテクスチャは粗くフィジカルで
リズムに至ってはグルーヴィですらある。
それらの要素は過去の作品における精巧さやインテリジェンスとは実に対照的で
これもまたポスト・エレクトロニカまたはポスト・ポストロックの地平における
試行錯誤の一つの形であるだろう。


それ以上に語るべき点は少ないが
音を出す・音を重ねるという行為が持つシンプルな快楽に満ちていて
とても心地の良い作品だと思う。