LCD Soundsystem / This Is Happening

ディスコパンクという呼称には以前から違和感があって、LCD Soundsystemの新作を聴いてその感覚は助長された。

ディスコは解るとしてもパンクはどちらかと言えば隙間を嫌う音楽で、LCD Soundsystemの隙間だらけのサウンドとは真逆だと言って良い。
ファンク若しくは(パンクという言葉をどうしても使いたければ)ポストパンクが妥当だろう。

それにしてもこのシンプルで突出した特徴の無いサウンドが、時代を象徴する音の一つとなった事には改めて驚かされる。
それはまた00年代という時代の特異性を表象するようでもある。

勿論エレクトロニカの残滓を色濃く残した00年代の中頃にこのチープ極まりないシンセ音が齎したインパクトは想像に難くない。
けれどもしもリアルタイムでこの音に接していたとしたら、当時の肥大化した頭ではきっと拒否反応を起こしたに違いない。
00年代の空気を少しずつ咀嚼して、何とか耐性が付いた現在だからこそそれなりに楽しめる音楽ではある。

何にしても00年代は終わりJames Murphyは自らLCD Soundsystemの幕を引いた。
また一つ時代の音が終息してゆく。
さてM.I.A.はどうだろうか。