The Roots / How I Got Over

The Rootsの通算9作目。
気付けば?uestloveが敬愛するDe La SoulGang Starrを凌ぐリリースを重ねてきた訳だ。
特にヒップホップおいてグループはとにかく長続きしない。
辛うじて存続出来たとしても、コンスタントに作品を作り続けられるグループは実に稀だ。
(大抵強すぎるエゴが原因だとするのは流石に偏見だろうか。)

更にThe Rootsは決して前作と似たようなアルバムを作らない。
今作は全体的にギターが控え目で、代わりにピアノや管楽器、ストリングス等の音色が目立つ。
何処か室内楽的な雰囲気があり、?uestloveのオーセンティックな素養が存分に発揮された印象を受ける。
お気に入りのDirty Projectorsに触発でもされたのだろうか、と言うのは何せAmber Coffman本人やJoanna Newsomまでが参加しているのだから、強ち的外れでもないのかも知れない。

とは言ってもそれは決してセンセーショナルな変化ではなく、長年The Rootsの音楽に慣れ親しんできた人間にとっては予想の範囲内でもある。
そもそも?uestloveはヒップホップというアートフォームに対して尋常ならざる愛情と憧憬を持った人で、お遊びでハードコア・パンクを演ってみたりする事はあってもヒップホップを大きく逸脱するような作品は作らない。
それでも音楽的好奇心に忠実に、常に明確なヴィジョンを以て制作に臨み続ける彼らを、ヒップホップ史上最も偉大で信頼に足るグループの一つとして扱っても、最早時期尚早ではないだろう。

それは例えばMy Bloody Valentineがたった一枚のアルバムでポップ・ミュージックの歴史を大きく塗り替えたのとは違って、Sonic Youthが長い年月を掛けて徐々に築き上げてきたような類の偉大さである。
Sonic Youthが決してギターを手放さないように、The Rootsも決してヒップホップから離れる事はない。