Skream / Outside The Box

La Rouxのリミックスのスマッシュヒットを考えれば、Skreamの新作がポップに振り切れた事もごく自然な成行きかも知れない。
Ruskoの俗っぽさはある種のハイプだと捉えていたが、正真正銘シーンのオリジネイターであるSkreamにここまでやられると、ダブステップのポップ化は最早決定的な流れなのだろうと思う。
それは良く言えばより広範な訴求力を持ったサウンドの追求であり、悪く言えばセルアウトという事になる。

MursがラップするロービットチューンやUKファンキー、ドラムンベース・リヴァイヴァルなど、このアルバムはダブステップとその周辺のトレンドのショーケースのようでもある。
その散かり様は、丁度1年前にダブステップの多様化をレペゼンしていたHyperdubのコンピレーションを遠い過去の事のように思わせる。

重く低いベースやエコー/リヴァーブの効いたスネアなどが消え失せた訳ではないが、それらダブステップを特徴付けてきた要素は最早このサウンドの唯一絶対の主役ではなく、様々なスタイルを繋ぐ役目も果たしてはいない。

仮に初めて聴くダブステップがこの作品だったとしたら、自分なりにそのサウンドを解釈・定義する事は不可能だっただろう。
それはベースやダブ処理が弱くなったと言うよりも、他の要素(例えばハウシーな歌でありオートチューンであり多弁な上モノ)の存在感が増した事による、言わばアイデンティティの相対化が齎した結果のように思える。

何にしてもダブステップの幸福なアンダーグラウンド時代は終わり、これからは二極化が進行してゆくのだろう。
結果が称賛か批判かは置いておいて、これは近い将来その契機として位置付けられる作品だという気がする。

乗るか乗らないか、後は好みの問題で、何だかんだ自分は結構気に入って聴いている。