Magnetic Man / Magnetic Man

ヴィブラフォンとストリングスによる退屈で冗長なイントロダクションを抜けると、そこにはダンスフロアが広がっている。
ラガ・スタイルの女声MCにチープなシンセ音、重低音で唸るベースラインと4/4のタイトなキックに1/4のスネア、無駄な装飾を一切削ぎ落としたようなサウンドは、Burialこそが真のダブステップだと信じて疑わない人達にとってはただのハイプなのかも知れないが、シンプリシティもまたUKガラージやグライムからこのジャンルが引き継いだ魅力であるのも事実だろう。

冒頭の曲こそ蛇足ではあるが、同じようにポップを志向したSkreamの近作と較べても、無駄な遊びの無い、完璧に機能的で徹底的に享楽的な、フロア向けで夜向けのサウンドが続く。

UKで大ヒットした「I Need Air」にはSkreamソロの「How Real」やRuskoの「Hold On」、そしてそのRuskoが手掛けたM.I.A.の「XXXO」といった曲と共通する感覚がある。
それらは「ダブステップを通過したポップス」とでも言えそうなもので、最初は少なからず抵抗感と戸惑いを覚えながらも昂揚感には抗えず、今では2010年を象徴する個人的なアンセムと化している。

それでも一方でこの傾向が続くのは流石に少し辛いという思いもあり、その点では2010年は同時に少なからずダブステップの停滞を印象付けられた一年でもあった。
最たる要因は先のポップ路線に対抗し得るアンダーグラウンドからのインパクトが無かった事で、その意味でBurialの新作がリリースされなかったのは本当に痛かった。
そして早くも時代はポスト・ダブステップに突入し…。