Summer Sonic 2010 8/7 Sat


Smashing Pumpkins

久々に観るBilly Corganは、とても穏やかでリラックスしているようだった。
スキンヘッドは相変わらずだったが、ゴスから一転してラフな格好で、ぎこちないながらもオーディエンスとのコミュニケーションを楽しんでいるようにも見えた。

宛ら00年代のニューヨークのショーケースだったフジロックから余り時間が経っていなかったせいかも知れないが、Smashing Pumpkinsサウンドのメタリックなディストーションや過剰にドラマティックでナルシスティックな展開には、どうしたって時代遅れな感が否めなかった。
現在のティーンエイジャーでSmashing Pumpkinsを絶賛するような輩が居たら絶対に信用ならないし絶対にお友達になれない。

それでも思春期に聴いた音楽の呪縛とは恐ろしいもので、「Today」「Bullet With Butterfly Wings」といった曲には否応無く身体と心が反応してしまう。
アンコールの「Cherub Rock」、Billy Corganはその曲をオーディエンスに捧げると告げ、続けてこう言った。
「Thank You For Believing The Smashing Pumpkins

こんな救いようの無いロマンティストが作った音楽と自分の思春期が分かち難く結び付いてしまっているのだから、本当に性質が悪い。



Pavement

最初で最後にPavementのライヴを観たのは、メンバー間の人間関係が最悪に険悪だった時期で、それから間も無くして正式なアナウンスも無いままバンドは空中分解してしまった。
その時のライヴは確かに淡々としていて何処かピリピリとした雰囲気すらあったが、Pavementにしては精緻でエレガントな「Terror Twilight」の世界観を再現するには悪くない状況だったのかも知れない。

この日のPavementは、過去の確執など無かったかのように和気藹々としていて、演奏はまぁとにかく適当この上無くトラッシーだったが、ローファイを歌や演奏の破綻や不完全性を音楽的なチャームポイントに転化させる試みだと定義してみるなら、今回の方がよりPavementの本質に近い姿であっただろうと思う。
その意味でこの再結成は、Pavementにとって10年越しの解散ツアーだったのかも知れない。



Atari Teenage Riot

90年代のある時期において、Alec Empire及びAtari Teenage Riotは紛れも無く時代の寵児だった。
後に多くの才能をフックアップするBjörkがAlec Empireにラブコールを送り、1回目のフジロックにおいて一番観たい出演者を問われた山塚アイAtari Teenage Riotの名前を挙げていた。

約10年振りに観るATRには、そんな時代があったかと隔世の念を禁じ得なかったが、深夜まで残った観客は皆、彼等の帰還を心底待ち侘びていたように見えた。
(待ってましたとばかりに始まったポゴダンスの懐かしかった事!)
他界したCarl Crackに加えてHanin Eliasまでもが居ないATRからは、かつての鬼気迫る感じや危うさは確かに薄れていて、ファン手製のATRロゴ入りフラッグにご満悦のAlec Empireの姿は微笑ましくすらあった。
そのファンとの関係からは、昔のATRからすると嘘のような「ピースフル」などと言う言葉すら思い浮かんだが、そこに嫌悪感はまるで無く、むしろ一つの幸福な音楽の歳の取り方だとすら思った。