Slum Village / Villa Manifesto

噂ではこれで最後になるというSlum Villageのアルバム。
ジャケットに記されたJ Dillaの名前が確かにそんな覚悟を感じさせもする。
ただDe La SoulA Tribe Called QuestのPhifeに、QuestloveやDweleといったSoulquarians周辺、そしてJ Dilla実弟であるIlla Jらといったゲストの面々からは、Slum Villageのラストアルバムという以上に少し時期を外したJ Dilla追悼作という感じも受ける。

J Dilla直系のトラックにDweleが参加した8曲目なんかは、まるで「The Love Movement」の続きを聴いているようだ。
10年以上も昔の音楽と地続きだというのは、アーティストにとってみれば実に不名誉な感想には違いないだろうが、それはアメリカのヒップホップ(と言うよりラップ・ミュージック)全体に当て嵌まる表現なのだから、Slum Villageの評価を何ら辱めるものではない。
それどころか、この少なからず90年代を引き摺ったサウンドには、自分にとって決して抗えない魅力があるのは確かで、少なくともここ2〜3年の間にリリースされたオーセンティックなラップ・ミュージックの中では5本の指に入るくらい気に入っている。

複数のビートメイカーによるトラックにはどれも甲乙付け難い存在感があり、豪華この上無いゲスト・ラッパーやシンガー達がそれに華を添えている。
けれども正にそれが故に、この作品には何処か中心を欠いたような印象を受け、ここからはSlum Villageというグループの作家性がまるで見えてこない。
(それはビートメイカーを失ったグループに付き纏う困難ではあるだろうが、そう考えるとCommonやMos Defといったソロのラッパーは実に巧くやっている。)

この時代に果たして「中心」などというものが必要なのか、もっと言えばアルバム単位で音楽を捉えようとする事に有効性が残されているのかは判らない(恐らく既に旧時代の遺物でしかないのだろう)が、この作品に関してのみ言うならば、「J Dillaが元居たグループ」というイメージのまま、Slum Villageの幕が閉じられるようで少しばかり残念ではある。