Hessle Audio / 116 & Rising

近い将来2011年のポスト・ダブステップを思い出す時に真っ先に想起するのは、「James Blake」とテクノ寄りの2つのレーベルが発表したコンピレーション ― Hotflushの「Back And 4th」と本作 ― になるだろう。
尤も当事者の間ではどうも「ポスト・ダブステップ」というカテゴライズは不評らしく、Hessle Audioのホームページに大々的に「ベース・ミュージック」という単語が使われているのは、「最早ダブステップとは関係ありません」というステートメントに違いないのだろうけれども、確かに2つのレーベル・コンピは何れもかつてのダブステップとは掛け離れたサウンドが大半を占めている(かと言って単純にベース・ミュージックと聞いて想像する類の音楽とも違っているけども)。

面子が重複している事の他にも2枚のコンピレーションには共通点が多々あって、何れも2枚組でしかもDisk1に新録、Disk2に既発曲を集めた構成に於いても一致している。
例えばUntoldのトラックをDisk1/2で聴き比べると、時間を遡っている筈なのに寧ろ進化の過程を聴いている様な錯覚に陥る点までが共通している。

とは言えHessle Audioの方がよりミニマルでリズムに重点を置いた印象があり、Pearson Soundの呪術的でパーカッシヴなトラック等はまるでジュークに影響されたShackleton聴いているみたいだ(ジュークからの影響というのはPearson Soundのみならず、Disk1のトラックの多くに見られる特徴だと思う)。
やはり圧巻のJames Blakeはさて置いて、Joeの生ドラムやパーカッション類のチョップを巧みに使用した構築的なビートとジャジーなセンスは、「Back And 4th」に於けるMount Kimbieと同じような意味で輝きを放っているし、Addison Grooveによる執拗なヴォイス・サンプルのループとキックの連打はそれこそUKベース・カルチャーに於けるジューク需要の(現在のところの)最良の成果であるようにも思える。

聴きどころは豊富だが、多様性よりもここ数年のダブステップが展開した拡散のある種の帰結を聴くようでもあり、イーブンキックと2ステップの差異が然して重要とも思えず、総じて思うのはだったらいっその事テクノで良いんじゃないかという事で…。