Iggy Pop / Every Loser

ゴッドファーザー・オブ・パンクことIggy Popのパンク回帰作という前評判から、何処かで期待してしまっていた部分があったのだと思うが、M1からThe Stoogesとは似ても似付かない、例えるならBilly Idolみたいなパンクとは名ばかりの、殆どハード・ロックにいきなりがっかりさせられる。
この曲にはChad SmithとGuns N' RosesのDuff McKaganが参加しているが、初老のロック・スター達が声を揃えて歌うコーラスなんかとてもじゃないがダサくて聴いていられない。

まぁIggy Pop本人に関してのみ言えば、確かに齢75歳にしてこの歌声は凄いとは思わされる。
若作りしているようには全く聴こえないにも拘らず、シャウトに痛々しさはまるでない。
尤もパンクも含めてロック・ミュージック自体が若々しい音楽だとは全く言えないが。

一概にそれが悪いという事ではないが、M4なんかはテンポが速いだけの単なるブルーズ・ロックだし、M2やM9、M11なんかのチージーなシンセはパンクと言うよりニューウェイヴ的で、何処か昨年聴いたJohnny Marrのアルバムと共通する感覚もある。
単純にバックのコーラスの声がMike Millsに似ているという理由でしかないが、M3はR.E.M.みたいでもある。

結果としてパンクを意識したであろう曲はタイトルもずばりなM7くらいなもので、Iggy Pop本人としては久々に威勢の良いロックンロール・アルバムを作る程度の意図しか無かったのではなかろうか。
マーケティング上の戦略性は抜きにして、元気な老人が演るロックンロールとして聴く分には然程(例えばPaul McCartney程には)嫌味も恥ずかしさも無く、そんな気配は勿論微塵も無いが、仮に本作が遺作となったらそれはそれで凄いなと思ったりもする。