Emeralds / Does It Look Like I'm Here?

本作のイントロを聴いてある人はロールプレイングのゲーム音楽みたいだと漏らしたが、自分が想起したのはやはりTangerine Dreamのようなコズミック・サウンドだった。
2009年のMetamorphoseTangerine Dreamを観た際の感想は率直に「何かダサい」というもので、同時に頭に浮かんできたのは「ニューエイジ」という言葉だった。
ニューエイジの聴取経験はほぼ皆無に等しく、無根拠なイメージには違いないが、捻りの無いシンセサイザー音と何処かフォルクローレみたいな哀愁漂うメロディがその言葉と結び付いたのだろうと思う。

ある面では確かに本作(特にM1等)にはそのようなニューエイジ臭が漂うが、一方でドローンと電子音とギターによるサイケデリックなアンビエンスはその叙情性と併せてFenneszに通じる感覚もあり、「Endless Summer」再びといった趣も無くはない。

しかし同時にこのサウンドFenneszや過去のMego作品にあった何かを決定的に欠いているような印象を受ける。
「Editions」が付く前のMegoには急進的であると同時にコアな音楽ファン以外を寄せ付けないようなスノビズムや排他性があり、それはFenneszの場合も、Pitaの場合も「ノイズ」にカテゴライズされる音に表象されていたように思う。
何をノイズとするかはかなり難しい問題ではあるが、メロディやリズムといった要素に与しない音をノイズと呼ぶと仮定すると、Emeraldsの音楽にノイズは殆ど聴き取れない。

電子音響に括られる音楽からの影響は希薄で、アンビエントにフォークを乗せたようなふざけた展開からはクラウトロックを纏ったジョークなのかと思いもするものの、一体何処からこの音楽が(ヨーロッパなら未だしもアメリカの若い世代によって)生まれてくるのか一向に皆目見当が付かず、唯々頭の上には大きな「?」が浮かぶばかり…。
尤もその「?」との出逢いこそポップ・ミュージックの変遷を追い続ける事で得られる大きな悦楽の一つには違いないのだが。