Red Hot Chili Peppers / I'm With You

Red Hot Chili Peppersのキャリアに於いてギタリストの交代がサウンド面でのターニング・ポイントになってきたのは紛れも無い事実だと思う。
Dave Navarroを擁した「One Hot Minute」は今やキャリア最低の駄作のような扱いを受けているが、ディストーションの効いたメタル調のギターがRed Hot Chili Peppersディスコグラフィに異質な色彩を与えているのも確かで、個人的には未だに愛聴盤である。

ところがこの度幾度目かのギタリスト脱退劇を乗り越えて制作された本作では、ワウペダルやカッティングを多用したプレイと言い、ファルセットのコーラスと言い、新任ギタリストはJohn Fruscianteの影をなぞるばかりで音楽的な飛躍はおろか退行さえも齎してはいない。
ディスコ調やラテン・ミュージックの要素が散見される点が変化と言えば変化だが、それにしても「Californication」以降のポップス志向の延長線上にあるもので、バンドが第二期John Frusciante期を理想形として定めた証左であるようにも感じられる。

ポップである事自体に文句は無いし、ポップス志向が開花した「By The Way」にしろ、キャリアをポップに総括した「Stadium Arcadium」にしろ、聴いている内に何だかんだで気に入ってきた。
本作にだって気を許せば懐柔されてしまいそうな感じもあるのだが、もう好い加減食傷気味と言うか、そもそもの始まりは流石に陰部にソックスを被せたり電球を被っている歳でもない、というところが出発点なのだろうけれども、逆に成熟と言うよりは老衰した印象で如何なる好奇心もそそられない。

「ミクスチャー」とか「オルタナティヴ」とか呼ばれた時代が何とも懐かしく、しかし考えようによってはファンクがディスコやラテンに置き換わったのだとも言えるし、大体何と呼んで良いのか判らないという意味では現在の方がより「オルタナティヴ」な音楽なのかも知れないが、それが一体に何のフォローになるだろうか。