Hot Chip / In Our Heads

Dean Blunt & Inga CopelandやActressを聴いて以降というもの、一部のダブステップのテクノ/ハウス回帰で個人的に高まっていたダンス熱は吹き飛ばされてしまった感があるが、打って変わってHot Chipの新作はヒプナゴジックもウィッチも全く関係無いとばかりの享楽性で満ち満ちている。
但しブロステップのように頭が空っぽ(そう)な軽薄さとは違い、その中にも知性や批評性や思慮深さを滲ませる点はやはりLCD Soundsystemを思わせる。

アンビエント・テクノ風のシンセに始まり、ハウスにディスコ調、UKガラージ/2ステップ風等々、本作がカバーするダンス・ミュージックの範囲はそれなりに幅広く、イーブンキック主体のシンプルなビートの一方で、バンドならではの多彩なアレンジメントも飽きが来ない。

M4やM8といったある種箸休め的なポップスもアルバムのトータリティに効果的に作用していて、ポップ職人といったイメージを喚起させる点ではPaul McCartneyなんて名前が出てくるのも不思議ではない(尤も個人的にヴォーカルの声質から想起したのはSean Lennonだったが、まぁどっちでも良い)。

ポップ/ダンス・アルバムとしての完成度の高さ故に、破綻は無く新鮮さや引っ掛かりには乏しいが、とりあえず今はこの自己主張の薄さが寧ろ心地良くもあり、その衒いの無さには何となく心意気すら感じてしまう。