Spank Rock / Everything Is Boring And Everyone Is A F---ing Liar

00年代の中頃に、Spank Rockが登場したりBeastie Boys「To The 5 Boroughs」やDJ ShadowThe Outsider」といった作品がリリースされた頃には、エレクトロニックなサウンドが愈々アメリカン・ヒップホップを席巻するような機運も感じられたものだったが、その後は陳腐なオートチューンが蔓延した程度で相変わらずKanye WestJay-Zがデカい顔をしてのさばり続けているし、Commonのエレクトロニックな挑戦作「Universal Mind Control」も然して好評だったという評判は聞かないし、OFWGKTA周辺ではチルウェイヴをサンプリングしたりする動きもあるようだが、まぁちゃんと聴いていないので良く判らない。

その最初期にAfrika Bambaataaという偉人を抱えているにも拘らず、アメリカのヒップホップは何時からかエレクトロを完璧に忘れてしまったように見える(今我々がエレクトロと呼んでいるのは大抵フランスやドイツの白人の音楽だ)。
やはりKraftwerkやCanをサンプリングするような感性は、アフリカン・アメリカンの中では異端なのだろうか。
LAの状況などを想起すれば、Flying Lotusのような若く冒険心に溢れた才能は、とっくに狭義のヒップホップ=ラップ・ミュージックを見限っていると言う方が正確なのかも知れないが。

Afrika Bambaataaと言うよりは2 Live Crewの再来のように感じられたSpank Rockの音楽は、UKでのグライムのブレイクと時期が重なった事も手伝って当初からヨーロッパとの親和性の高いものだったし、その後の主要な活躍の場もやはりヨーロッパだった。

自らが生まれ育った国でスターになり損ねたMC Spank RockはXXX Changeと袂を分かち、本作で新たにジャーマン・エレクトロのBoyz Noizeとタッグを組んで、媚びるどころか益々アメリカに背を向けている。
全編に渡り横溢する如何にもなコンプレッサーの効いたシンセやベースの音は、前作よりも更にエレクトロに接近した印象を与えるが、SantigoldのアンニュイなヴォーカルをフィーチャーしたM3やM5のエレクトロ・ロックンロールに、クワイトのリズムとアンセミックなレイヴ調を行き来するM6等、それなりにバラエティに富んでいて意外に楽しめる。

この手の音の求心力がここ1〜2年で急激に減衰した感は否めないし、何よりブリーピーなベース・サウンドは些か聴き飽きたのも事実だけども、Pitchforkが酷評する程には退屈だとは思わない。