Björk / Biophilia

冒頭のハープの音色は2001年の「Vespertine」を彷彿とさせるが、その後に挿入される地鳴りのような低く重たいベースが本作が単に過去の焼き直しでない事を宣言している。

M3に於ける唐突なドラムンベース、と言うよりブレイクコアに象徴されるように、本作のビートはBjörkのディスコグラフィの中でも最も攻撃的な部類のもので、Radiohead「The King Of Limbs」同様にベース・ミュージックからの影響を感じさせる。

例えば「Jòga」に代表される、強靭で時に暴力的なビートとクラシカルな器楽音の対比というのはBjörkお得意の常套手段の一つである。
但し本作でビートと対を成しているのは荘厳で雄大なイメージを喚起させるオーケストラではなく、むしろ密室的なハープやオルガン、グロッケンシュピールに似た響きのオリジナル楽器等の音で、Dirty Projectorsに感化されたかのようなポリフォニーや分断が多く一定しないリズム等と合わせて室内楽的な印象を受ける。

それは正にチェンバー・ポップとベース・ミュージックの融合のような音楽で、Björkがやるに相応しく成程と感心はするものの、1997年に「Homogenic」に醸出した異物感とは較べようもなく、それ以上の言葉は出てこない。