Childish Gambino / 3.15.20

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真っ白なジャケット(フィジカルのリリースが無いのでこう呼ぶのが正しいのか判らないが)に各トラックの開始時間を配した素っ気無い曲タイトル(Global Communication「76:14」へのオマージュ?、なんていう事は先ず無いだろうが)、リヴァーブによる変調された声の反響とピアノで構成されたアンビエント/ドローン調の勿体付けたイントロといった、如何にもコンセプチュアル佇まいに加えて、M2やM7のノイジーでインダストリアルな音像や、随所に散りばめられたゴスペル的な要素やオートチューンが、Kayne West「Yeezus」を彷彿とさせる。

重いキックは確かにヒップホップのそれだが、ラップらしいラップは少なく、寧ろStevie WonderからD’Angeloに至るまでのソウル、R&Bの系譜に連なる印象を強く受けるという点で、ラップの快楽度では比ぶべくもないが、Anderson .Paakに通じるものがある。
(M5のブギー・ファンク風やM12の熱量漲るソウル・チューンは特に。)

アナログ・シンセがスムース・ソウル風のM4にはTyler, The Creator「Scum Fuck Flower Boy」「 Igor」と共振する感覚があるし、Kadhja Bonetのヴォーカルが現れる同曲の後半ではSolangeにも通じるアンビエンスが立ち上がる。
M3やM6のコーラスの効いたギターがMiguelを思い起こさせたりもして、要するにChildish Gambinoもまた2010’s以降に巻き起こった、R&Bとヒップホップの境界線を無効化するような動きを体現する重要なアーティストの一人である事が良く解る。

サウンドに特段の目新しさは無いし地味と言えば地味だが、佳曲は多く充実作と言って良い内容であるのは確かで、その割に前作と較べると今一つメディアのリアクションは乏しい気がする。
単に簡素なプロモーションのせいだと思いたいが、ついついBLM関連で話題を呼んだ「This Is America」の影響なのではないかといった良からぬ妄想が頭を擡げてしまう。