Kanye West / Yeezus

冒頭数曲のエレクトリックでディストーテッドな音像ややたらと芝居がかったヴォーカルは、冗談抜きでNine Inch Nailsでも聴いているかのようで、センスが好きかどうかは置いておいても、確かに今大型フェスのヘッドライナーが一番似合うのはKanye Westかも知れない。
良くも悪くも最近には珍しく大作然としており、Daft PankとHudson MohawkeとFrank Oceanが顔を揃えるのはKanye Westのアルバム以外考えられない。

如何にもヒップホップらしいビートは極僅か、ヴァース/コーラスという構成はほぼ皆無で、メインストリームのヒップホップに於いてここまでその様式を逸脱した作品は他にはちょっと思い当らず、このような作品がグラミー賞(しかもベスト・ラップ・アルバム!)にノミネートされてしまうというのは、Kanye Westが徐々に時間を掛けて蓄積してきたキャリアの功績でもあるだろう。

Daft PunkはFarrellの作品にも参加していたが、10年前にはこのような形でメイン・ストリームのUSヒップホップとフレンチ・エレクトロが結び付くとは思ってもみなかった。
長らく停滞感のあったUSヒップホップ/R&Bはここ数年で息を吹き返した印象があり、その過程でエレクトロニクスに対する躊躇が払拭されつつあるのは確かなように思われるが、もしかすると背景にはあの忌々しいEDMとやらの影響があったりするのかと考えると複雑な心境ではある。

事実Kanye WestSkrillexとコラボレートすら行っているが、コラボレーターとしてHudson MohawkeやArcaとSkrillexを併置出来るセンスは到底理解出来ず、やはりどうしてもKanye Westの事が心底好きにはなれそうもない。