Shackleton / Music For The Quiet Hour / The Drawbar Organ EPs

ミニマルとの親和性云々の一方で、目まぐるしく展開するShackletonの音楽にトラックという単位の意味が余り見出せていなかったが故に、前半のShackleton版「Long Season」といった5部構成には至極しっくりくるものがあった。
まるでディジュリドゥのような揺らぐドローンと地を這うダブ・ベースで幕を開けるその「Music For The Quiet Hour」(いつもながらタイトルが秀逸)は、相変わらずポリリズミックなパーカッションが特徴的だが、Aphex Twinのあの曲とは違っていつまで経ってもスネアがダンス・ビートを刻む瞬間は訪れない。

印象的なガムランめいた高音は、これまでのShacketonの黒魔術を連想させる面妖なエキゾティシズムに新たな色彩を加えていて、相対的にShackletonの代名詞とも言えるアフリカン・パーカッションやタブラの音色の存在感は後退し、今まで以上に多様な電子音響やノイズ(ハーシュ・ノイズまで!)の重要性が増しているという点で、これまでで最も非ダンスよりの作品だと言えるだろう。
仮にリズムを全て剥ぎ取ったとしても充分に聴き応えのある音響作品として成立するとでも言うか。

一方で後半のThe Drawbar Organ EPsでは、よもやダブステップと言うよりテクノの方がまだ妥当かとも思えるようなダンスビートが展開されている。
オリエンタルなシンセの旋律に銅鑼のようなシンバルが、まるでゴシック西遊記といったイメージを喚起させるM6や、Shackletonにしては珍しく直線的な2ステップのビートが展開するM7等、引き続きめくるめくホラーな音響群に戦慄しながらも前半には無かったポップネスを聴き取る事が出来る。

どのトラックも圧倒的にオリジナルで、本作でShackletonはダブステップはおろか、過去20余年に渡るエレクトロニック・ダンス・ミュージックの如何なるサブジャンルにも属さない孤高の才能を確立した、なんて大袈裟な事さえ言ってみたい衝動に駆られる。