Zazen Boys / すとーりーず

M1では「法衣を纏ったLed Zeppelin」なるコンセプトと、近年の向井秀徳シンセサイザーに対するフェティシズムとが融合を見せている。
ニューウェイヴィなM3はKimonosみたいだし、M4のギターが奏でるアルペジオのセンチメンタルな旋律や直線的なベースラインやエモーショナルなブレイクはNumber Girlそのものだ。
シンセのコズミックなシーケンスで始まるM10は「I Don't Wanna Be With You」「Asobi」路線のディープ・ハウス調アンセムを予感させるが、ドラムが8ビートを刻んだり、遠くでディストーションが鳴り響いていたりと、意外な展開が待ち構えていたりもする。

要素そのものは向井秀徳の過去のキャリアに散見出来たものばかりという意味では、Kimonos同様に集大成的な作品ではあるが、更に本作に特徴的なのはその要素ーポスト・パンクにエモにディープ・ハウスにニューウェイヴーの折衷主義であろう。
(但しダブとヒップホップだけがここには無い。)

Number Girlとの対比によって鮮やかに浮き彫りになるのは、加速するようだったアヒト・イナザワのドラムと中尾憲太郎のベースとは対照的な松下敦吉田一郎による正確無比でマシニックですらあるリズムであり、装飾を排したM1等は宛らミニマル・テクノのように聴こえる瞬間さえある。

けれどもテクニックをひけらかすような様子は無く、前作のような野心も希薄で、何処か淡々と自然に出てくる音をコンパイルしたといった印象で新鮮味には乏しいが、ポテンシャルの高さは言わずもがなだし、聞けば向井秀徳はソロ作品を構想中だと言うから、次作ではそのフィードバックを聴けるかも知れないという面では、まだまだZazen Boysを盛りを過ぎたバンドとして切り捨てるには時期尚早だろう。