Perfume Genius / Set My Heart On Fire Immediately

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M1はピアノのアルペジオ、ストリングス、コード進行等のどれを取っても「Everybody Hurts」そっくりで、ピアノが高揚感を煽るM12もR.E.M.っぽく、Mike MillsがPerfume Geniusを好きだというのも頷けるが、逆にMichael Stipeのヴォーカルの不在がぽっかりと空いた大きな穴のように眼前に突き付けられる。
Perfume Geniusの何処を取っても嫌いではないのに今一つ響かないのは、没個性な歌声のせいなのかも知れない。
(Grizzly BearとかVampire Weekendとか皆、声質が被り過ぎだと思うのは自分だけだろうか。)

前作が「Up」から「Around The Sun」辺りまでの、Bill Berryの脱退を契機にエレクトロニクスを導入した時期のR.E.M.をフラッシュバックさせたのに対し、本作は「Out Of Time」や「Automatic For The People」を彷彿とさせる。
と同時にM2やM10で聴ける90’sオルタナティブ・ロック的なファズ/ディストーション・ギターは「Monster」までも射程に入れるかのようでもある。

エレクトロニックな要素は比較的減退したものの、相変わらずRadioheadみたいな曲もある。
チェンバーなアレンジメントも健在だが、M4のチェンバロやストリングスの響きはThe High Llamasなんかを彷彿とさせ、ソングライティング面でのポップネスが大きく開花した印象もある。
これまでの作品では一番好みかも知れない。

それでもこの残らなさはBon Iverを聴いた後の感覚に近く、何故だか心から好きとは言い切れないのもBon Iverに似たナルシズムを感じてしまうせいだろうか。
第一、どれだけ繰り返し聴いても他のアーティストとの類似性でしか良し悪しを語れないというのは、オリジナリティの致命的な欠落の証拠だとしか思えないのだが。