Lizzo / Special

The Knack「My Sharona」のベース・ラインを借用したと思しきM4やMichael Jackson風のM8は、ゲート・リヴァーブ的なドラムの音響と言い、標榜している事が大して違うとは思えないのにThe Weekndに対してはどうしても拭えない胡散臭さを微塵も感じさせず、只管ポップで楽しい。
というのはLizzoの存在自体がポジティヴなせいだろうか?

他にもBeastie Boys「Girls」を使ったM3等、アルバムの至る所に80’sのレファレンスが散りばめられている。
本作や(胡散臭いと言っておきながら何だが)The Weeknd「Dawn FM」或いはMitski「Laurel Hell」なんかを聴いていると、80年代もそんなに悪い時代ではなかったのではないかと思えてくる。 

ダンス・オリエンテッドな前半にはBeyoncé「Renaissance」と共振する感覚が無くもないが、「Dawn FM」に於けるOPNのようなキーパーソンが居ない分、プロダクションは簡素でチープと言っても差し支え無く、音響的な面白味もギミックも全く無い。
機能性重視でウェルメイドという意味ではSilk Sonicにも通じると言え、その手の作品が大好きなグラミー賞を狙える作品であるかも知れない。

とは言えファンキーなベースが跳ねる直球ディスコ・チューンのM2に於けるVan McCoy「The Hustle」を始めとして、80’sフレイヴァに加えてディスコ・クラシックからの引用(他にはMinnie Riperton「Lovin’ You」等)も効果的で、全編で重厚なホーン・セクションが大活躍しているのもソウル好きには堪らない。