Foo Fighters / But Here We Are

Foo Fighters史上で最も過剰なディストーションを伴うM10に唯一レクイエムめいた感傷を感じなくはないものの、気恥ずかしさを覚えるヒロイックなタイトルの割に全体としては然程仰々しさは無く、シンプルで意外にも落ち着いていて何処か清々しさすら感じさせる。
M2やDave Grohlの娘をヴォーカルに迎えたM7に至っては爽やかと言っても過言ではない。

印象としては激しくない「Wasting Light」或いはあっさり目の「The Colour And The Shape」といった趣きで、ポップに作り込まれオーヴァー・プロデュース感もあった前作「Medicine At Midnight」に比べてある種のラフさがある。
Taylor Hawkinsの死を受けて、それでも歩みは止めないというバンドの緊急ステートメントとして突貫で制作されたであろう事は想像に難くない。

面白いと言えるような何かがある訳でもなく、相変わらず取るに足りないポスト・グランジハード・ロックで、それでも何となく聴けてしまうところも含めていつも通りのFoo Fightersではあるが、仰々しく御涙頂戴の作品を作るのは簡単だったであろうところを敢えてそうしないところにやはりDave Grohlの人柄が滲み出るようで、少なくとも嫌悪感はまるで湧いてこない。
それどころか珍しく変拍子のタイトル曲ではある種の壮絶さや唯ならぬ熱量だけは伝わってきて、理性は必死で止めに掛かっているのに瞬時に交感神経が昂まってしまう。

基本的には暑苦しいのに不思議とそれほど鬱陶しくないのは、激情型でありながら仄かに中性的なDave Grohlの声に依るところが大きいかも知れないと(今更だが)思う。
声質は違えどAnthony Kiedisにも同じ事は言え、老害感の薄いヴォーカルというのは息の長いロック・バンドの共通点の一つではあるかも知れない。