Shafiq Husayn / Shafiq En' A-Free-Ka

もう結構な時間このアルバムの凄さについて考えて過ごしているのだが、未だ納得のいく着地点が見付からないままでいる。
Sa-Raの新作も非常に素晴らしかったが、この作品はその洗練はそのままに、より混沌としアヴァンギャルドでありながら、メロウでファンキーである。
或いはフューチャリスティックでコズミックであるにも関わらず、同時に土着的で猥雑な音楽。

つまりこの作品には、訳が分からない程に様々な要素が奇跡的なバランスで同居している。
ここにはソウルがあり、ファンクがあり、アフロビートがあり、レアグルーヴがあり、そして勿論ヒップホップがある。
しかし同時にこの音楽は、そのどれにも似ていない。

非常に安直な表現だが、この音楽を聴いていると
「ブラックミュージックの未来」という言葉が頭を離れない。
ブラックミュージックのイノヴェーターとして、Sa-Raはしばしばプリンスの後継者と呼ばれるが、同じくプリンスの発展型を標榜した(であろう)Beckの「Midnite Valtures」の
遥か数光年先にこの音はある。

音楽の進化を未来に延びる一本の直線と仮定してみた時、方々に分岐したブラックミュージックの進化の線は全てこの音楽に繋がっている。
そして逆方向に遡っていったならば、そこには「アフリカ」があるに違いない。
そんな妄想が頭を過ぎる。
しかしながら、この音楽を一言で表す事の出来る「R&B」とは便利な言葉だとつくづく思う。