Weezer / Hurley

「Pinkerton」の後のWeezerの停滞にはやはりMatt Sharpの脱退が深く関っていたように思う。
「The Green Album」以降の楽曲における単調でフックの無いベースラインを聴く限り、Rivers Cuomoのその点での才の無さは明らかで、かと言ってThe Rentalsを聴いてもMatt Sharpがそれ程優れて創造的なベーシストだとも思えないので、Rivers CuomoとMatt Sharpの二人が居る事によるバンドのケミストリーが確かにあり、それが失われてしまったという事なのだろう。

Matt Sharpが去った後のWeezerの作品の大味なプロダクションや、明らかにやる気の無いソングライティングやアレンジメントには失望し続けてきたが、それはMatt Sharpの不在によってバンドの均衡が崩れ、WeezerがRivers Cuomoのワンマンバンドと化した事により、楽曲をバンドで熟成させるプロセスが機能しなくなった結果だったのだろうと想像する。
確かにそれらの作品は殆どRivers Cuomoが作ったデモテープを聴いているようだった。

この最新作には1stの鉄壁のバンド・アンサンブルも2ndのフリーキーなプロダクションも無いものの、ソングライティングやアレンジにはそれなりの創意工夫の跡が聴き取れ、ストリングスやシンセサイザーにフルートやマンドリンなど、これまでに無かった多彩な音色が本作に掛けられた熱意と労力を感じさせる。
外部のソングライターとのコラボレーションの成果なのだろう。
やはりRivers Cuomoにはパートナーが必要なのだ。

「Pinkerton」以降一番の充実作だと思うが、惜しむべくは低音ばかりを強調したミックスで、どうせならば手間暇掛けた部分をもう少し丁寧に聴かせて欲しかった。