Mark McGuire / Get Lost

テクノ/ハウス・ミュージックの台頭以降、特定の楽器とミュージシャンの作家性が結び付けられるケースは大幅に減ったようにも思えるが、Mark McGuireというギタリストには久々に現れたギターヒーローというような印象がある。

ギターとエレクトロニクスが相互に浸食し合う様はやはりFenneszを彷彿とさせるが、シューゲイザー的なフィードバック主体のFenneszのギターと異なり、Mark McGuireの語法はもっと多彩で、フォークや或いは時にアメリカーナ的な響きさえもが聴こえてくる。
Fenneszサウンドに於けるギターは、サーフィス・ノイズと同時にアトモスフェリックな音響を生成する役割を担っているという意味である種周辺装置的だが、Mark McGuireの場合のそれはより曲の根幹を成していて、些か妙な表現ではあるが「ソング・オリエンテッド」等という言葉さえ浮かんでくる。

実際本作では時折リバービーな歌が挿入されるが、それは何処かPanda Bearを彷彿とさせるもので、Manuel GöttschingやTangerine Dreamなんていう名前が出てくる時点で既視感ならぬ既聴感のあるサウンドには違いないが、それらと同時にFenneszAnimal Collectiveを想起させ、フォーキーなアンビエントのようにも、エレクトロニクスを多用したアシッド・フォークのようにも聴こえるという点に於いて斬新な音楽だとも思える。

そのエレクトロニクスやギターのバランス感覚は、ポップ・ミュージックの趨勢に於けるテクノの台頭と、それに伴うロック・ミュージックの相対化を目の当たりにしてきたが故に、エレクトロニクスとギターを等価に扱う事の出来ない旧世代からは出て来ようが無いもので、エレクトロニクスが予め当たり前のものとして在った世代としてMark McGuire及びEmeraldsを捉え直す事で、「Does It Look Like I'm Here?」を聴いた際に浮かんだ大きな「?」は見事に着地した感もある。