Gold Panda / Good Luck And Do Your Best

M1のグリッチや女声のヴォーカル・チョップはFour Tet「There Is Love In You」を思い起こさせ、フォーキーでややエキゾティシズムを漂わせるM6はWechsel Garlandを彷彿とさせる。
ストリングスやアコースティック・ギターに各種鍵盤打楽器等の可憐で儚げな高音のサンプルが多用されたサウンドには、正にフォークトロニカ・ミーツ・ベース・ミュージックといった趣がある。

ピアノのチョップと変則的な4/4のビートがハウシーなM3は、FaltyDL等のフューチャー・ガラージとの親近性も感じさせるし、多彩な生楽器の音色はMount Kimbieに通じるところもある(M7の生ドラムのビートによる2ステップなんてもろに)。
何れのトラックにも何処かで聴いたような既視感があるが、連想するサウンドは決して最先端のものではなく、先鋭化する嘗てポスト・ダブステッパー達の動向には目もくれず、リスナーとしての趣味を衒いなく反映したような音楽である。

お世辞にもオリジナリティがあるとは言い難いし、刺激にも乏しいが、寧ろオリジナルなものを作らなくてはならないといった気負いが一切感じられない、と言うよりも自らの才能に対する一種の諦念のようなものさえ感じさせる。
純化すれば自分が聴きたい音楽を創っているという表現になるが、しかし非常に高度なアマチュアリズムの発露で、人柄が伝わってくるような衒いのないセンチメンタルなメロウネスと共にDorian Conceptに通じるフレンドリーさがある。

勿論ビート・プロダクションではGold Pandaのスキルの方が断然上だし、メロディから上モノに至る要素のどれもが及第点以上で、構成にも展開にも破綻は無い。
しかし正にそれ故に、Dorian Conceptの場合の色彩豊かなレイヤーほどの傑出したストロング・ポイントや個性が見え辛いのも確かで、節操が無いと言うまでのものではないにしろ、音色にしてもビート・パターンにしても確固とした拘りは感じられず、器用貧乏的という点ではMachine Drumに通じるものがある。