Jim O'Rourke / All Kinds Of People -Love Burt Bacharach-

これまでBurt Bacharachという名前には何の興味も湧かなかったけれど、この作品を聴いた今となっては考えを変えざるを得ない。
とにかくメロディが素晴らしい。
洗練されていて創意工夫に満ちている。
こういった曲を聴いてしまうと現在身の周りにあるメロディの凡庸さが気になり始め、むしろソングライティングはどんどんと退化して行っているのではないかとすら思えてくる。

Jim O'Rourkeのプロデュースワークは「The Visitor」同様決して派手さは無いが、各音の輪郭が驚く程鮮明で、巧妙な音の配置が素晴らしく立体的なサウンドを作り上げている。
華美さは無く音数も少な目で非常にシンプルな構造にも関らず、とても豊潤な音楽だという感じがする。

細野晴臣Kahimi KarieはともかくThurston MooreやYoshimiや中原昌也といった凡そそのイメージには似つかわしくない人達がヴォーカルとして参加しているが、違和感は全く無く、かと言ってベタ過ぎもせず、各々の声や歌唱に新しい魅力を発見する事が出来る。
それぞれの声が持つ個性や歌唱法を的確に捉えた上でアレンジメントや選曲が為されているからだろうと思う。

ヴォーカルとして参加している面々の殆どはJim O'Rourkeにとって極々身近な人達だが、その声や歌という対象を見据えるJim O'Rourkeの視線には馴合いや内輪乗りは一切感じられず、むしろ非常に冷徹な印象すら受ける。

豪華なゲストにも関らずスタジオで和気藹々と繰広げられるレコーディング風景等は連想出来ず、むしろ思い浮かぶのは自宅で黙々と機材と格闘するJim O'Rourkeの姿だ。
原雅明が「孤独を感じる音楽」と評していたが、正にその通りだと思う。