2022-01-01から1年間の記事一覧
感情を持たないミスティックな人形のようだったFKA Twigsが喜怒哀楽を獲得して人間になった、そんな妄想を掻き立てるミックス・テープ。そしてそれは確かにArcaの足取と重なるものでもある。正確には無かったのはメランコリア以外のエモーションと言うべきだ…
The Weeknd「Dawn FM」に引き続き、2022年になっても相変わらず80年代は終わる気配を見せない。(勿論90年代だって同じだが。)M6の直線的なベース・ラインとオールドスクールなシンセはA-haなんかを彷彿とさせるし、M7はまるきりNew OrderでM11もディスコテ…
やる気こそ感じられないがしっかりとリズムに対するフロウがあり、「Some Rap Songs」に較べると余程ちゃんとラップしていると言える。トラックにはやはりこれと言ったフックは無く相変わらずデプレッシヴで空疎ではあるが、前作にあったような極端にアブス…
Madlibの作品の中でも確実に指折りのキャッチーさで、フリーキーさは減退し洗練が際立った印象がある。その洗練は間違い無くKieran Hebdenにより齎されたもので、特にM4やM6(Young Marble Giants!)といった、これまでのMadlibには余り無かったストレート…
シンセ・アンビエント/ドローンとリズム・マシンによるドラム・ビートにJenny Hvalのスポークン・ワード/歌。時折装飾もあるがほぼ3つの要素のみの単純な構成で、更には要素のどれを取っても単体では然したる新奇性も認められないにも拘らず、それらが複…
ビートレスが賛否両論を呼び起こしているようだが、逆に言えば従来のBurialとの違いはそこしか無い。サンプリングによる歌/声の断片のコラージュ、クラックル・ノイズとレクイエムのようなパイプ・オルガン、そしてそれらが作り上げる茫漠として霞んだノス…
Squidが思いの外良かったので購入してみたが、吐き捨てるようなヴォーカル・スタイルを抜きにすればポスト・パンクの一言で済まされる音楽ではまるでない。ヴォーカルにしてもSquidに較べればしっかりとメロディを歌っており、投げやりなようでいて同時に熱…
インディ・「ロック」かどうかはさて置き、これまでで最も器楽演奏がはっきりと認識出来る作品であるのは間違い無い。メンバーが口を揃えて語るように、特にPanda Bearが叩くフィジカルで素朴とさえ言って良いドラムの音色が作品のトーンを決める上での肝に…
俄かには信じ難いが、OPN「Magic Oneohtrix Point Never」と本作には殆ど兄弟のような近親性を感じる。勿論スタイルも性格も大分違うが、FMラジオというモチーフや、全編に渡り一貫した明け透けな80‘s趣味に於いて、同じ腹から産まれた作品であるのは確かな…
スピリチュアル・ジャズ的な楽曲を多く含んでいた前作に較べてよりストレートなハウス/ダンス・トラックの存在感が強く、レーベルメイトでもあるBicepやDisclosureにも通じるような機能性がある。M11のピッチを落としたドラムンベースみたいなビートやアナ…
元よりYoung ThugにはFutureと共に現在のシンギング・ラップの隆盛を作った張本人という印象があるが、ここまでポップ・ラップの波に呑み込まれてしまっているとは。ギターの存在感が強いトラック群はLil Nas Xにも近く、ヒップホップが人種を超えて真に大衆…
宛らポップのショーケースのようなアルバムだ。M1はJulia Holter「Have You In My Wilderness」のインテリジェンスを薄めたような(と言っても決して頭が悪そうという意味ではないが)チェンバー・ポップで、M2は直球のディスコ調。M4のシンセ・ポップのギタ…
ブルーグラスやヒルビリーを想起させるM3やM6のホーン・アレンジや、フリー・ジャズのインプロヴィゼーションのようなM5のドラミング等、ジャズ・ヴォーカル・アルバム云々といった評価が全く解らない訳ではないが、アメリカーナ的な意匠の導入は今に始まっ…
冒頭から柔らかなモジュラー・シンセの音色に一瞬で引き込まれる。その上で自由闊達に歌うような鳥の囀りとハープはまるでユートピアを描写するかのようだ。ハープの旋律は少しエスニックな感覚も惹起し、笙にも似たシンセの響きと合わさってスピリチュアル…
正真正銘ポスト・ダブステップ最後の大物による10年越しの遅過ぎるファースト・アルバム。M3はBurial「South London Boroughs」を思わせるバウンシーな2ステップで、猛烈な懐かしさに包まれる一方で、今聴いても機能的であると同時に素晴らしくスタイリッシ…
このタイミングでのUKのポスト・パンク・リヴァイヴァルというのには些か唐突な感もあって少しばかり懐疑的なところもあったが、良し悪しはさて置き猛烈にMark StewartやMark E. Smithを連想させるM2のヴォーカルは紛れも無くポスト・パンクとしか呼びようが…
その名もクィア讃歌のM4はFKA TwigsやKelelaに通じるエレクトロニックR&B/モダン・トリップホップで、相対的にではあるが「Kick II」がグローバル・ビーツ、「Kick II」がIDMで、「Kick IIIII」がモダン・クラシカルな側面にそれぞれフォーカスした作品だと…
取り敢えずヒップホップにカテゴライズされている印象があるが、歌ではない声が主役の音楽であるという点くらいしかその共通点・妥当性を見出せない。確かに複数のラッパーがゲストに招かれているが然程存在感があるとは言えないし、Moor Motherの発声にラッ…
前作で感じたArca第二章はやはり本物だった。形の定まらない突然変異体だったArcaがレゲトンやクンビアといったトライバルなビートや、変調されたスペイン語のヴォイス・チョップ/チャント/ラップといったアイデンティティを得て、一気にポップ&グロテスク…
やはり益々Brian Enoをなぞるかのようだ。本人は本作に於けるその影響をきっぱりと否定していたが、タイトルからしてオマージュだとしか思えないし、完全に無視出来るという意味でこれがアンビエントでなければ何がアンビエントだと言うのか。もしも本人の言…
Arthur Verocaiのアレンジによるストリングスを大々的に採り入れたM3やM5がアルバムの重要なフックになっており、単なる話題作りの為のコラボレーション以上の充実した成果を挙げている。ストリングスの多用という点では少しFloating Points「Elaenia」を彷…
坂本龍一とのコラボレーション再びという事で、「Async」のリミックス盤に於ける、口にするのも憚られるような身の毛もよだつ日本語のリリックが半ばトラウマになっていただけに、一抹の不安が過ぎったが全くの杞憂だった。全編に渡り美しいメロディが横溢し…
Arca自身がクラブ・ミュージックにフォーカスしたと語っているように、これまでで最もビート・メイキングの才能が爆発した作品だと言えるだろう。勿論頻繁にテンポは変わるわ瓦解するわで、ここでの「クラブ・ミュージック」は決してフロア向けのダンス・ミ…
Sacred Bonesからのリリースという先入観から、例えばGrouperみたいなエクスペリメンタルなフォークを期待していたが、蓋を開けると管弦楽器やハープによるオーケストラルなアレンジはあるものの、総合的には余りに普通のフォーク・ロックで拍子抜けした。印…