2022-01-01から1年間の記事一覧

700 Bliss / Nothing To Declare

獰猛なサブベースとそれを囃し立てるかのようなパーカッシヴな要素、隙間だらけの構造上のシンプリシティといった特徴はグライムの一種に分類しても良さそうなものだが、重低音ばかりが強調されているという訳でもない。忙しないハイハットはトラップのよう…

Kelly Lee Owens / LP.8

「Inner Song」の抑制が効きつつも享楽的なテクノとは随分作風が違う。本人をしてThrobbing GristleとEnyaの融合と言ったとか言わないとか。確かに即物的なノイズで組み立てられたかのようなビートはインダストリアルと言っても過言ではなく、冗長性の面でも…

Belle And Sebastian / A Bit Of Previous

こんなバンドだったっけ?というのが最初に抱いた感想。ヴァイオリンを伴奏にしたM1の牧歌的なネオアコはTeenage Fanclubにも通じるようなグラスゴーの伝統を感じさせるギター・ポップだが、M3は日本のグループ・サウンズのパロディみたいで不覚にも笑ってし…

Pusha T / It's Almost Dry

Pusha Tの作品をPharrell WilliamsとKanye Westが半分ずつプロデュース、しかもJay-Zまでフィーチャーという、まるで名球会のオールスター・ゲームみたいな事になっているが、これが意外にも悪くない。Pharrellが手掛けたトラックは、前面に配されたサブベー…

Johnny Marr / Fever Dreams Pts 1 - 4

まさか冒頭からElectronic路線が来るとは予想だにしていなかった。と言うか正直言ってM1のイントロを聴くまでそのバンドの存在すら忘れていた。これが当然身悶えする程古臭く、ちょっと笑えてくる程。作った本人にとっては例え不本意だとしても、笑えるとい…

Whatever The Weather / Whatever The Weather

Aphex Twin「Selected Ambient Works」に準える声もあるようで、確かにM10等は解らないでもないものの、個人的にはそれよりも例えばM1の柔らかなシンセ・アンビエンスが醸し出す豊かな歌心のようなものからGlobal Communication「76:14」を想起させられた。…

The Smile / A Light For Attracting Attention

冒頭のくぐもったアナログ・シンセの音は「Kid A」/「Amnesiac」期のようだ。Sons Of KemetのTom Skinnerのテクニカルなドラミングに、ロウな音色の単音ギターのアンサンブルが絡むM2も「Hail To The Thief」にあったような曲調だし、M4も「Pyramid Song」…

Sharon Van Etten / We've Been Going About This All Wrong

大半の曲はフォーク・ロックとドリーム・ポップの合いの子のようで、最近聴いた中だとGirlpoolとかに近い。やさぐれたBlondieみたいなディスコ風のM9等の例外はあるものの、要するに総じて退屈極まりない。ソフトウェア・シンセサイザーが嘗てのアコースティ…

Kendrick Lamar / Mr. Morale & The Big Steppers

朴訥としたピアノの調べに不釣り合いな風切音のようなノイズが左右にパンニングされる冒頭から、突如高速ブレイクビーツに切り替わりストリングスが彩りを加えるM1は実にエキセントリック。久々のFlying Lotusとのコラボレーションかと思ったがクレジットの…

Wilco / Cruel Country

M1は誰か別のメンバーが歌っているのかと思ったが、クレジットを見る限りではヴォーカルは全てJeff Tweedyとなっており、まるでBob Dylanの歌真似でもしているかのようだ。自伝でもBob Dylanへの敬愛を表明しているJeff Tweedyの事だから全く有り得ない話で…

10 Best Albums Of 2021

Tyler, The Creator / Call Me If You Get Lost Little Simz / Sometimes I Might Be Introvert Loraine James / Reflection Jpegmafia / LP! Darkside / Spiral Arca / Kick III Arca / Kick II Tirzah / Colourgrade Nala Sinephro / Space 1.8 Lana Del R…

Girlpool / Forgiveness

ノイジーでグリッチーなオープニングこそやや新鮮な感じもあるが、仄かにオートチューンが掛けられたヴォーカルが入ると一気に有りがちなドリーム・ポップ/シンセ・ポップに転落する。後半に音圧強めのドラム・ビートとウォブル・ベースが入ると、一気にBea…

Klein / Harmattan

どんな経緯があったのかは知らないが、Hyperdubからではなくクラシック専門のレーベルからのリリース。とは言え中身はエクスペリメンタルなエレクトロニック・ミュージックなのでしょう、と幾分舐めて掛かったところ、M1はタイトル通りの純然たるピアノ曲で…

Kehlani / Blue Water Road

Sydの新作(未聴)は「Fin」から随分モード・チェンジしている模様だが、そのSydと懇意(?)のKehlaniの新作は、ビートの多くがトラップ・ベースでありながら、抑制の効いた上物と歌唱によって全体を覆う至ってクールな(要するエモくない)質感が確かに「F…

Vince Staples / Ramona Park Broke My Heart

Kenny Beatsを招聘してサンプリング・ベースのヒップホップへの回帰を覗かせた前作に対して、トラップ・ベースのビートとアンビエント的なシンセ主体の上物によるエレクトリックな質感が基軸となっている。但しグライムやバブルガム・ベースとの同調を見せた…

Arcade Fire / We

宛らU2みたいに勇壮で些かヒロイックなM1の冒頭こそ想定の範囲内だが、中盤でシンセ・ベースのアルペジオを合図にしてエレクトロ風ともディスコ・パンク風とも呼べる曲調に変化するのには多少の意外性もあった。続くM2の4つ打ちのドラム・ビートにもTame Im…

Spiritualized / Everything Was Beautiful

ローファイと言えば聞こえは良いが、何処か弛緩した印象のあった前作に較べて格段に音の厚みが増し、冗長さは雲散霧消してSpiritualized本来の、冗談みたいな壮大さやユーフォリアが復活している。これが逆説的な意味でも何でもなくCOVID-16パンデミックにイ…

Sufjan Stevens And Angelo De Augustine / A Beginner's Mind

最近は他人とのコラボレーション活動が目立つSufjan Stevensだが、継父とのアルバムはアンビエント/ニュー・エイジだったと人伝に聞いていたし、本作は各曲毎に1つの映画(しかも有名な大衆映画ばかり)を題材とした作品という事で企画物を予想していたが…

Kurt Vile / (Watch My Moves)

アコースティック・ギターを持ったポートレイトのジャケットのせいかも知れないが、巧みなフィンガー・ピッキングの印象が強かった「B'lieve I'm Goin Down...」に較べて、M1の牧歌的なピアノとホーンやM2のチープなドラム・マシンのビート、M3のリヴァース…

Sleaford Mods / Spare Ribs

一言で言うならばローファイなエレクトロ・パンク。辛うじてメロディックな要素は無くもないし、もっと弛緩もしているが、そのチープなビートに何となくSuicideを連想してしまう。或いは腹が弛んだDeath Grips、然もなくば町工場のCabaret Voltaireとか何と…

Eiko Ishibashi / Drive My Car Original Soundtrack

一聴して先ずいつも通りの石橋英子に安心感を覚える。大きくは2つのコンポジションに異なるアレンジを施した計10曲で構成されているが、映画音楽に有りがちな、キャッチーなメイン・テーマを構成楽器を変えて繰り返すだけのものとは全く違い、それぞれが個…

Rosalía / Motomami

M1のレゲトンはスペイン語の響きも相俟って(「Kick I」に客演した縁のある)Arcaと共振するようだが、上音はほぼ低音オルガンを増幅させたようなシーケンスのみで構成されており、Arcaとは較べものにならないくらいにシンプル。寧ろナスティなローファイ感…

Jenny Hval / Classic Objects

今から10年近く前、Julia Holterが「Loud City Song」でアンビエント/ドローンを裏切り大きくソフィスティケイテッド・ポップに舵を切った時には鮮烈な驚きがあったものだったが、しかし単純なセルアウトの一言では片付けられないそのエクスペリメンタル・…

Damon Albarn / The Nearer The Fountain, More Pure The Stream Flows

雅楽のようなオープニングは音色だけで言えばTim Heckerと聴き紛う程、と言うのは明らかに言い過ぎだとしても、アコースティック・ギターとヴォーカルが合流するとある種のアシッド・フォーク的なムードを醸出する。M3はチープなリズム・ボックスのビートがG…

Cate Le Bon / Pompeii

過度にフランジャーが掛かったクリア・トーンのギターのロウなストロークに、何処か不完全で歪なホーンが絶妙に気持ち悪いタイミングで挿入されるM1は、奇妙なミキシングのバランスがある種の不条理さを醸し出すという点でダブ的にも感じられる音像がSun Ara…

Robert Plant / Alison Krauss / Raise The Roof

流石にLed Zeppelinに於けるハイトーンのヴォーカリゼーションとは懸け離れているが、それでもRobert Plantの歌声の70歳とはとても思えない若々しさには驚かされる。元々Led Zeppelinで最も苦手だったのがあのヴォーカルだっただけに、落ち着いた歌唱には寧…

Beach House / Once Twice Melody

アコースティック・ギターのアルペジオとストリングス、オーバーダブによるハーモニー等が一体となってラウンジ感を醸出するM1は猛烈にAirに酷似していて乗っけから驚かされる。特にストリングスの導入はアルバム全体を通じてシネマティックなムードを齎す上…

Charli XCX / Crash

バブルガム・ベースの「ベース」の部分の要素は限りなく希薄になり、最早正真正銘のバブルガム・ポップ。特にM4等は益々とPerfumeに近付いていくかのようだ。中には寧ろEDMと呼んだ方がしっくりと来そうなトラックも多く、Charli XCXに関して今更セルアウト…

Raveena / Asha’s Awakening

レイドバックしたレゲトン風のM1や、マリンバの音色が気怠くドリーミーなムードを醸出するM3等は、Kali Uchisに非常に近いものを感じさせる。コロンビア出身のKali Uchisの場合はカリブ海の音楽がその基盤になっていたが、ここではシタールやタブラといった…

Jpegmafia / LP!

SEの多さやサイケデリックでドラッギーな音像はEarl Sweatshirt「Some Rap Songs」に通じるが、もっとファンクネスもメロウネスもあって要するに至極ポップ。声質こそやや没個性だが、割とオールドスクールなスタイルのラップのフロウはタイトでリズミックな…