2010-01-01から1年間の記事一覧
最近ある雑誌でJames Lavelleの近影を見て些か愕然とした。 かつてのスタイリッシュな英国産Bボーイの面影は全く無く、まるでMorrisseyかMark Stewartと見紛うような中年がそこには居た。 (どうしてあの国の男性は年を取るとオールバックにジャケットを着込…
音楽をディケイドで区切って捉える事に大した意味は無い。 けれども音楽に過剰な価値を見出す人間にとって それが抗いようの無い魅力的な事であるのも良く解る。 要するに我々は10年だろうが1年だろうが100年だろうが 事ある毎に音楽の話がしたいのだ…。 勿…
ほんの数ヶ月前にリリースされた前作が、少ない音数で作られたアンビエンスとメロディについてのアルバムだとすると、本作は同じ方法論で作られたダンスとリズムについての作品だ。とは言え過剰に複雑なリズムの冒険が成されている訳ではなく、逆に驚くほど…
どんなトレンドにも廉価版やセルアウトは付き物だが、Ruskoの音楽はまさしくダブステップの廉価版で、言うならばハイプである。このサウンドがダブステップから受け継いだ点は、過剰な重低音と遅いBPMだけで、ここにはディストピアへの憧憬も無ければダーク…
90'sのアメリカン・オルタナティブにサイケデリアの要素はほぼ皆無だった。 だから尚更にFlaming Lipsが1999年に発表した「The Soft Bulletin」及び「Race For The Prize」というアンセムの異物感とインパクトは凄まじく、それは少し性質の悪いジョークかと…
これはある種のタブーなのかも知れないが、「Live Through This」というアルバムからはどうしてもKurt Cobainの気配を感じずには居られない。 全ての曲がKurt Cobainの手によるものとまでは思わないが、かなり強力な影響下で曲作りが為されたであろう事は想…
三田格が「何の変哲も無いポップス」と評していたので、それはそれで面白いのではと期待して聴いたものの、この引っ掛からなさときたらまぁ只事でない。生演奏による内省的なポップソングに、周到に施された電子音や物音は、エレクトロニカの時代に暗躍した…
前作でのファイティング・ポーズが嘘のように今度のErykah Baduは穏やかでスウィートだ。 ?uestloveが久々にドラムを叩く「Window Seat」のイメージが強いのだろう(逮捕というトピックを提供したビデオの影響もあるか)、過去の作風への揺り戻しを指摘する…
これまでBurt Bacharachという名前には何の興味も湧かなかったけれど、この作品を聴いた今となっては考えを変えざるを得ない。 とにかくメロディが素晴らしい。 洗練されていて創意工夫に満ちている。 こういった曲を聴いてしまうと現在身の周りにあるメロデ…
Kool Hercがジャマイカからの移民だった事実は、ヒップホップとジャマイカン・ミュージックの間にある連続性の根拠の一つであるようだが、確かに反復性と低音域(特にベース)が曲の基幹を成す点等は、ヒップホップがレゲエ/ダブから継承した要素かも知れな…
早くもFlying Lotusはこの作品によってJ Dillaの影響下から軽やかな飛躍を遂げ、彼のサウンドを語る際の「ポストJ Dilla」というクリシェを完全に無効化した。 前作が未だビート集の趣きを色濃く残していたのに対し、本作で同様に矢継早に繰り出されるビート…
ポストロック/エレクトロニカにどっぷり嵌った身にとっては、この豪華極まりない三者のコラボレーションに歓喜してから早10年近くを経て、まさか新作が聴けようとは思ってもみなかった。 前作は三者の個性が判り易過ぎるくらいに入れ替わり立ち代りに現れる…
Tokyo No.1 Soul Set 正直、最近のソウルセットの四つ打ち主体のやけにアッパーなトラックやBikkeの躁的なテンションの高さには、昔のふざけているのか大真面目なのか良く解らないリリシズムが好きだった身としては、どうにも乗り切れない思いがあっただけに…
00年代の前半にThe Strokesの登場と共に勃興したロックンロール・リバイバルは、自分にとってその後の数年に渡って新しいとされる音楽から遠退く契機となった。 The Strokesが特別駄目なバンドとも思わないが、然程スペシャルな存在だとは未だに思えない。 …
振り返ってみると00年代のポップミュージックにおいて、結局最後までダンスホールはしぶとくモードであり続けた印象がある。 海の向こうでRoots Manuvaの存在感が大きくなり、日本においてはShiro The Goodmanが逸早くダンスホールへの肩入れを表明し出した…
Gaslamp Killerのドープネスにも Samiyamのフリークネスにもいとも簡単に興奮させられ 改めて現在のLAビートシーンの面白さに感服したが やはりFlying Lotusのサウンドが醸し出すサイケデリアは特別だった。 Gaslamp Killerの後を受けた、その最初の一音で …
ついこの間De La Soulデビュー20周年のアニバーサリーライブがあったかと思えば、今度は「スチャダラ大作戦」から20年である。 (尤もDe La Soulは世界中をツアーして廻っていたので 実際には21年目だった訳だが。) 同時代のUSオルタナティブ(つまりグラン…
この新作と同タイミングでリリースされた「Kocorono」のリマスター版には「1月」があるらしい。 その存在は薄々聞き知ってはいたものの、いざこうして眼前に出されるとどうにも怯んでしまうところもある。 自分は何故か、夏目漱石の「こころ」にインスパイア…
自分の聴き込みが甘いせいか、はたまたフルレングス故の熱意の産物か、若しくは同時期に併せてMadlib名義の新作を聴いていたからだろうか。 恐らくはそのどれも正解だろうが、このMadlibによるジャズプロジェクト初めてのフルレングスでは、至る所にMadlibの…
実に捉えどころの無いアルバムだと思う。 ある時は非常にシンプルで聴き易く、ポップな作品であるように聴こえ、またある時は複雑で混沌とした難解な作品にも聴こえる。この作品のポップさは近年のAutechreのサウンドには希薄だった要素、つまりは明確で解り…
Madlib名義での新シリーズ、第1段のテーマはずばりヒップホップ、しかもGuilty Simpsonとがぶり四つに組んだラップアルバムというのが嬉しい限り。 ラップを意識しての事か、ビートのズレ感は控え目だが、Madlibらしい、ミキシングなどに興味は無いと言わん…
これ程多面的なイメージを膨らませられるステージングを 果たして自分は観た事があっただろうか。 神々しくフレンドリーで、フリーキーでいて思慮深く クールで獰猛で土着的で都会的で攻撃的でピースフルでレイジーでタイトで… ステージ上のErykah Baduに目…
タブステップを聴かない友人に2562の近作を聴かせてみたところ、「安っぽい」というような感想が返ってきた。 このジャンルの中では飛び抜けて完成度の高い作品だという印象を持っていただけに些か不満ではあったのだが、よくよく考えてみるとポストエレクト…
中原昌也の使う褒め言葉は実に判り辛い。 例えば「下らない」「つまらない」といった彼の使う褒め言葉は 一般的には否定的な意味合いで使用されるものばかりだからだ。 けれども90年代を音楽と共に過ごした人間にとって この感覚はごく身近なものではないか…
00年代初頭の世界的なエレクトロニカの潮流の中で際立った存在感を示し得た国産レーベルと言えば、筆頭としてまずChildiscとRomzが挙げられると思う。 徹底したストイシズムでシカゴやケルンとコネクトした前者に対し、後者はスラップスティックな悪戯心やあ…
良くもまぁ大して代わり映えしない作品をこれだけ量産出来るものだと感心する。 過去の作品と比較すると、構成や展開は至ってオーソドックスだし、音響的に凝った箇所も殆ど聴かれないし、代名詞である変拍子ですら全くと言って良い程目立たない。 そのよう…
凡そ10年前のエレクトロニカの隆盛の中で台頭したアーティストは、今何らかの形で現在のシーンと自らの作家性の間で試行錯誤しているように思える。 シーンの立役者であり他に類を見ない進歩主義者であるAutechreですら、前作ではライヴとアンビエントという…
インナースリーブに配われた一枚の写真。 Wu-Tang Clan「Protect Ya Neck」 Pete Rock & C.L. Smooth「Mecca And The Soul Brother」等の ヒップホップ・クラシックに混じって、Anticonのテープが雑然と置かれている。 宛らAnticonの一筋縄では行かないキャ…
2009年の買いそびれその2。 N.A.S.A.のメンバーによれば、彼等のようなアメリカの若い世代にとってAnimal CollectiveはBrian Enoのような存在なのだそうだ。Atlas Soundのサイケデリックでドリーミーな音像もまた明らかにAnimal Collectiveの影響下にあり、…
かつて、The Rootsがバンドである事を理由に「ヒップホップではない」と揶揄された事からも解るように、サンプリングとは確かにヒップホップの重要な本質の一部だった。 手法としてのサンプリングは勿論現在でも使用されているのだが、その重要性が昔と比べ…