2011-01-01から1年間の記事一覧

Kode9 & The Spaceape / Black Sun

例えば90年代のディストーション・ギターのように、仮に時代を象徴する音色があるとすれば、00年代は間違い無くベースとリヴァーブの時代だったと言えるだろう。低音域への執着とダブ処理はダブステップのアイデンティティの一部であると同時に、ポスト・ダ…

Foo Fighters / Wasting Light

95年の1stの時点ではFoo Fightersがまさかこれ程ビックなバンドに発展するとは思いも寄らなかったが、今ではNirvanaをDave Grohlがかつて在籍したバンドとして認識している若者だって少なからず居る事だろう。 グラミー賞を取るくらいのバンドにとっては宿命…

Talib Kweli / Gutter Rainbows

ラッパーとトラックメイカーの結び付きというのはヒップホップ・カルチャーの一部のようなところがあり、Jay-ZやCommonのフックアップ無くしては当然今のKanye Westの地位も無かっただろうし、RZAがWu-Tang Clanを組織した背景にはラッパー達のプロモーショ…

Ghostface Killah / Apollo Kids

ヒップホップも誕生してもう30年以上になる訳で、ラップ・ミュージックがその成熟と共にスタイルの変容に乏しくなるのもある程度無理からぬ事だろう。 ロック・ミュージックの歴史と重ねてみるならば、The BeatlesはRun DMC辺りだとして、「Never Mind The B…

石橋 英子 / Carapace

以前からそうだが特に最近のJim O'Rourke関連作には本当に外れが無い。 本人名義の「The Visitor」やBurt Bacharachのトリビュート エンジニアとして参加したJoanna Newsomの近作に共通する 細やかで豊潤なアレンジメントは 本作では石橋英子による単一の感…

R.E.M. / Collapse Into Now

遂に本作で、R.E.M.の自身のキャリアをなぞるような動向が決定的になった。 勇壮でヒロイックな冒頭2曲は宛ら「New Adventures In Hi-Fi」のようで、続く数曲の弾けるギターとマンドリンやアコーディオンのアコースティックな音色は、「Out Of Time」〜「Aut…

Wagon Christ / Toomorrow

気が付けば同郷の才人達の誰にも増してLuke Vibertが作る音楽に金を払い続けている。 多数の名義によるコンスタントなリリースは勿論大きいが、Richard D. James、Tom Jenkinson、Mike Paradinasに較べると適度に洗練された過剰さの無いサウンドからは大きな…

Oneohtrix Point Never / Returnal

狂暴なハーシュ・ノイズに珍妙なSEや咆哮が入り混じる冒頭は、昔のBoredomsとKid606が遭遇したかのようで、Emeraldsの場合よりも遥かに親しみ深いものではある。 Emeralds「Does It Look Like I'm Here?」においても本作においても、M1はイントロダクション…

川粼 大助 / フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ

故人について身近な人間によって語られる言葉は、どうしたってセンチメンタルにならざるを得ない。 対象と書き手の距離感において本書は、Everett Trueの「Nirvana The True Story」に良く似ている。 (尤も同書は最終的にKurt Cobainではなくて、Courtney L…

Deerhoof / Deerhoof Vs. Evil

00年代の終わりから現在に至る数年間はどうも久方振りのアメリカン・インディ・ロックの時代という事らしいが、その在り方は昔と較べると随分様変わりしたものだと思う。 90年代のグランジ・ブームに端を発するインディ・ロックの流行は「オルタナティヴ」と…

Emeralds / Does It Look Like I'm Here?

本作のイントロを聴いてある人はロールプレイングのゲーム音楽みたいだと漏らしたが、自分が想起したのはやはりTangerine Dreamのようなコズミック・サウンドだった。 2009年のMetamorphoseでTangerine Dreamを観た際の感想は率直に「何かダサい」というもの…

Joanna Newsom / Have One On Me

新しい音楽に殆ど興味が湧かなかった00年代の中頃に、偶然耳に触れ即座に惹かれた作品が二つだけあった。 一つはAnimal Collectiveの「Feels」、そしてもう一枚がJoanna Newsomの1stで、後者はとある洋服屋で耳にして、そのハープの響きとロリータ・ヴォイス…

Simon Reynolds / Rip It Up And Start Again : Postpunk 1978-1984

自分がポップ・ミュージックに纏わる特殊で些か閉鎖的な文化圏に帰属意識を覚え始めたのは、多分まだグランジ・ブームの余韻冷めきらぬ1994年の事で、音楽専門チャンネルはKurt Cobainに関するやや陰惨なニュースに加えて、Dinosaur Jr.の「Feel The Pain」…

Oorutaichi / Cosmic Coco, Singing For A Billion Imu’s Hearty Pi

00年代のブルックリンに現れた所謂Boredomsチルドレンと呼ばれた一派の中で、Black Diceは「Super Roots」シリーズの実験性を踏襲するようだったし、Gang Gang Danceに「Super Are」以降のトライバリズムやシャーマニックな表現を見出す事は然程難しくはない…

James Blake / James Blake

振り返ってみると、ポスト・ダブステップにおけるR&Bの台頭は2009年のHyperdubのコンピレーションに既に顕在化していて、BurialやKevin MartinによるKing Midas Sound、更には後続のJokerなどのトラックにもその要素を聴き取る事が出来た。 James Blake待望…

Sleigh Bells / Treats

一聴して先ずM.I.A.「Maya」との類似に驚いた。 ラストナンバーのギターをサンプリングした「Meds And Feds」のみならず、作品を覆う過剰な音圧のキックまでがSleigh Bellsの影響だったとは。 一体このサウンドの何が、00年代を代表するポップ・アイコンにそ…

Planet-Mu / Bangs & Works Vol.1 A Chicago Footwork Compilation

もう何処で耳にしたのかも忘れてしまった(山本精一の著書だと思って読み返したが勘違いだった…)が、この世界の何処かにマイナーコードが楽しく聴こえる部族が居るという話を聞いた記憶があって、それを思い出す度に何だか勇気付けられる思いがする。 真偽…

Seefeel / Seefeel

Boredomsの最盛期を支えたドラマーの一人であるE-daが、このWarp古参のアンビエント・バンドに加入したというニュースには驚いたが、余りに退屈で直ぐに売ってしまったソロアルバムでのアンビエントには、確かにSeefeelのサウンドと通じる部分があったような…

10 Best Albums Of 2010

1. Flying Lotus / Cosmogramma2. Autechre / Oversteps 3. Jim O'Rourke / All Kinds Of People -Love Burt Bacharach-4. Ariel Pink's Haunted Graffiti / Before Today5. Erykah Badu / New Amerykah Part Two: Return Of The Ankh6. Deerhunter / Halcyo…

John Legend & The Roots / Wake Up!

The Rootsの演奏による60〜70年代のソウル・クラシック(Marvin GayeとPete RockがサンプリングしたM4くらいしか知らないが)なんて到底嫌いになれず筈も無い、筈も無いのだが矢鱈とヴィブラートを効かせるJohn Legendの歌声は暑苦しくて仕方無い。 とは言え…

Kimonos / Kimonos

正に昨今のポスト・ダブステップがそうであるように、ポピュラー・ミュージックにおける「ポスト〜」という言葉は、大抵の場合、特定の音楽スタイルや手法を指し示すものではなく、あるジャンルから派生/発展した潮流を総称して使用されるようだ。ポストパ…

Rovo / Ravo

移り気に見える山本精一のバンド活動としては、Rovoがこれ程長くコンスタントに作品をリリースし続けているのは、他メンバーの多忙さを鑑みても驚きである。 98年のRovoの登場は、Boredomesの劇的な変貌と共に大きな衝撃で、両者はテクノと言えばコーンウォ…

三田 格 / 裏アンビエント・ミュージック 1960-2010

Brian Enoの居ないアンビエント史というコンセプトには成程確かに口に出してみたくなる魅力がある。後書で三田格が述べているように、アンビエントとは特定のジャンルではなくそれらを横断するスタイルである。 前作がBrian Eno「Music For Airports」とThe …

Matthew Herbert / One Club

成程やはり「One」シリーズのコンセプトは二作目にしてクリアになってきた。 前作「One One」が「一人の人間」が複数の異なる場所で発した音をソースとして構築されていたのに対して、本作はクラブという「一つの空間」で、一定の時間の中で複数の異なる人間…

Diplo / Blow Your Head Dubstep

Mad Decentが下世話極まりないRuskoの作品をリリースした事はDiploによるダブステップのポップ化への加担を印象付けたが、このコンピレーションを聴く限り強ち間違いでもなかったようだ。本作から聴こえてくるのはBurialやKode9、或いはPinchらが推進してき…

Weezer / Hurley

「Pinkerton」の後のWeezerの停滞にはやはりMatt Sharpの脱退が深く関っていたように思う。 「The Green Album」以降の楽曲における単調でフックの無いベースラインを聴く限り、Rivers Cuomoのその点での才の無さは明らかで、かと言ってThe Rentalsを聴いて…

Contrarede Presents 4AD Evening

Ariel Pink's Haunted Graffiti スパンコールが眩いシャツにスリムパンツというふざけた格好で登場したブロンドのAriel Pinkの姿は宛らグラムロックのパロディで、額の後退したギタリストは「Thriller」のMichael Jacksonの服装をしたElvis Costelloのようで…

Ninja Tune / Ninja Tune XX Vol.2

Vol.1が現在のビートシーンを集約した内容だとすると、このVol.2はそこから零れ落ちた音をコンパイルしたような印象を受ける。序盤のThe Cinematic OrchestraやJaga JazzistによるモダンジャズやBonoboによるNinja Tune伝統のジャジーブレイクスこそ従来のレ…

Ninja Tune / Ninja Tune XX Vol.1

Ninja Tuneの活動20周年を記念するコンピレーションの1枚目は宛ら00年代後半から現在に至るブレイクビーツのトレンドのショーケースのようで、大雑把に分類すると3つのシーンに集約出来ると思う。まずDiploが牽引したゲットー/ベース・ミュージックには、Sp…

Electronic Tribe - Yebisu New Year's Party 2011

Daedelus Daedelusの存在はエレクトロニカの時代におけるグリッチ・ホップと、00年代後半に顕在化したアメリカ西海岸の先鋭的なヒップホップ・シーンとを繋ぐ殆ど唯一のリンクであるが、90年代後半のアンダーグラウンド・ヒップホップから「ドープ」という価…